下馬の集合住宅
KUS +team Timberize
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 共同住宅部門|奨励賞
建築主:
非公開
設計:
株式会社KUS 一級建築士事務所+team Timberize
施工:
大和ハウス工業株式会社
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
共同住宅+貸店舗
構造:
木造、一部鉄筋コンクリート造
階数:
地上5階
竣工:
2013年 9月
撮影:
淺川 敏
設計趣旨:
世田谷区の準防火地域に建つ5階建ての集合住宅である。「く」の字型の狭小な敷地は、広い幹線道路と静かな区道に面し、両側を3階建住宅に挟まれるが、街路樹や隣家の庭などの“借景”を生かすべく、共用階段を道の続きのように都市に開かれた場として外周に螺旋状に彫り込むかたちでつくり、周辺環境を住民皆で共有できるよう計画した。
1階を2時間耐火のRC造、2階〜5階を1時間耐火木造としている。木造部は120mm厚の集成材パネルを繊維方向を直交させて重ねた240mm厚のマッシブホルツスラブをベイマツ集成材の柱で支え、建物外周の斜め格子が水平抵抗要素として働く。火災時の崩壊防止を担う部材(柱・床・屋根・壁)と地震時の水平抵抗要素(木斜格子)を明確に分け、被覆型ながら木に触れることのできる耐火木造を実現した。木斜格子は外光を和らげプライバシーを緩やかに守る役割を果たし、鉄とコンクリートの街並みに豊かな表情をもたらしている。
(小杉 栄次郎、内海 彩)
小杉 栄次郎(こすぎ・えいじろう)
1968年東京都生まれ/1992年 東京大学工学部建築学科卒業/現在、秋田公立美術大学准教授、(株)KUS代表取締役
1968年東京都生まれ/1992年 東京大学工学部建築学科卒業/現在、秋田公立美術大学准教授、(株)KUS代表取締役
内海 彩(うつみ・あや)
1970年群馬県生まれ/1994年東京大学工学部建築学科卒業/現在、(株)KUS代表取締役、東京理科大学、東京電機大学非常勤講師
1970年群馬県生まれ/1994年東京大学工学部建築学科卒業/現在、(株)KUS代表取締役、東京理科大学、東京電機大学非常勤講師
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
5階建てのうち、上部4階が木造の各階1住戸の集合住宅。これを梁のない240mmの極厚でソリッドな木質のフラットスラブ形式で実現している。これによって上下階の遮音効果を得、同時に印象的な木製ルーバー状のブレースを構造要素として効かせている構成が巧みである。また周囲の変化に富む景観を生活の楽しみに取り込む螺旋状の外部歩廊は、カーテンウォールのようなシステマチックな外観に対するユニークで洒落たアクセントとなっている。ブレース要素を無耐火とし、木造ならではの柔らかな印象が合理的に実現されていることも含めて、決して構成要素が多いわけではないが、選ばれたどの役者も2役以上をこなし、新鮮で優しい印象に辿り着いている。
これ以上の進歩を望むとすれば、木ルーバー越しのガラスのクリーニングや、螺旋歩廊の建物内のコミュニティ装置としての工夫、さらに2系統の縦動線の住戸内の整理などが挙げられるかもしれないものの、秀逸な作品であることに間違いはない。この点が高く評価され、共同住宅部門奨励賞に選ばれた。
(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社執行役員
建築家、(株)竹中工務店 執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社執行役員