月島荘
三菱地所設計
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 共同住宅部門|優秀賞
建築主:
乾汽船株式会社
設計:
株式会社三菱地所設計 一級建築士事務所
施工:
東急建設株式会社
所在地:
東京都中央区
主要用途:
寄宿舎
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上8階、地下1階、塔屋1階
竣工:
2013年9月
撮影:
エスエス東京
設計趣旨:
月島荘は異業種のビジネスパーソンが共に住まう全644室の企業寮の集合体である。プログラムは以下の通り。
・同企業でフロアを独占せず、複数企業にて構成する。
・シェアハウスのシステムを適用し、生活を共有する。
このようなプログラムに対し、異業種の人的交流が加速する共住のカタチを模索し、他者との「距離感」を選択できる3つの単位空間によって全体を構成した。
・プラットフォーム:全644人のための共用部
・クラスター:2層約70室で構成する生活の基盤となるグループ
・ユニット:各個人の個室(18㎡)
配棟は周辺道路と同じ幅のリニアな中庭を挟む3棟並列配置とし、中庭に面して共用室と半屋外の動線空間を設けた。これにより中庭が、さまざまな行為が同時多発的に起き、匿名的な関係を保ちながらそれらの出来事を目撃する街路のような空間となることを目指した。
また個室階では、クラスター共用部がコア回りに配置され、移動や他の諸室を利用するついでに立ち寄る、日常の何気ない関係が生まれる場となることを意図した。
(清水 聡、多田 直人)
清水 聡(しみず・さとし)
1964年 群馬県生まれ/1989年 横浜国立大学工学部建築学科卒業/1991年 横浜国立大学大学院修士課程終了、三菱地所入社/2001年 三菱地所設計/現在、三菱地所設計 建築設計住環境部 担当部長
多田 直人(ただ・なおと)
1979年 神奈川県生まれ/2002年 東京理科大学工学部建築学科卒業/2004年 千葉大学大学院修士課程修了/現在,三菱地所設計 建築設計住環境部 主事
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
社員寮あるいは社宅という形式は、単体企業に勤める方たち、あるいは世帯によって構成される住宅、すなわち、ある意味閉じた環境のコミュニティを意味するビルディングタイプとして一般的には認識される。
シェアという言葉は、その本質的な意味が空間化されるとすれば素晴らしい概念であるが、近年この言葉が一般化する中では、本来の意味とかけ離れた空間がこの用語によって説明されるのを耳にすることも少なくない。
「社員寮」を「シェアする」このプロジェクトでは、住戸ユニットと共用空間を、複数の企業の社員寮として利用してもらうことで、生活空間の共同利用にとどまらず、業種を超えたコミュニケーションが創出される住空間の提供というコンセプトが掲げられ、その着想、従前考察されていたプログラムからの転換の経緯など、コンセプト形成とプロジェクト推進に対する建築主の英断には感嘆するものがある。
分棟形式によって施設にとって有効なプログラムだけを配置する考察、住戸ユニットの配列とファサード表現における構造的な工夫など、設計者の的確な判断のもとに建築主のコンセプトが空間化されている。主たる共用施設は、機能を振り分けられて3棟の1階部分に配置され、それぞれから各棟の1階共用空間に対して横串に視線が通る構成となっており、共用空間における入居者の活動が個別の行動であっても、それらの重なりを互いに自然に感じることができる。
ここでは単に空間の機能を共同利用することから一歩踏み出した「シェア」の感覚を覚えることでき、優秀賞にふさわしい新しい風景が実現されていると感じられた。
(國分 昭子)
國分 昭子(こくぶん・あきこ)
建築家、(株)IKDS 共同代表
1988年東京大学工学部建築学科卒業後、槇総合計画事務所/1997年より株式会社IKDS/2013年東京大学工学系大学院都市工学専攻にて博士号取得