りびんぐの家──人を繋げる共用リビング──
ビーフンデザイン + EANA
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 共同住宅部門|優秀賞
建築主:
大野 洋亮
設計:
株式会社ビーフンデザイン一級建築士事務所 + EANA
施工:
元気建設株式会社
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
賃貸併用住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
竣工:
2012年12月
撮影:
平井 広行
設計趣旨:
人を繋げる共用リビング
都内の新興住宅地に建つ、施主住居+3戸の賃貸併用住宅である。このような新しい街には古くからの付き合いは皆無に等しく、地域コミュニティは希薄である。「向こう三軒両隣」といった身近な地域コミュニティを新たに根付かせる必要があると感じた。そのため、各所に「抜け間」を設け、採光・通風を各戸に届けるだけでなく、広場を中心に専有・共有を問わず立体的に繋がることで、あらゆるコミュニティのシーンをもたらし、居住者の意思でまるでリビングのようにそこに団欒が生まれることを意図した。また居住者間でのイベント開催も運営上の計画に含まれており、若い世代で盛り上げ、その活気が近隣へと繋がっていくことを願うのである。
(進藤 強、阿部 任太、岩﨑 浩平)
進藤 強(しんどう・つよし)
1973年 兵庫県生まれ/1996年 京都精華大学美術学部デザイン学科建築専攻卒業/1998-2002年 アーキテクトン/2001年 ビーフンデザイン共同設立/2012年 株式会社ビーフンデザイン一級建築士事務所
阿部 任太(あべ・とうた)
1979年 福岡県生まれ/2001年 京都精華大学デザイン学部建築学科卒業/2001-2009年 アライアーキテクツ一級建築士事務所/2009年 Enjoy And Architecture EANA(イアナ)共同設立
岩﨑 浩平(いわさき・こうへい)
1977年 兵庫県生まれ/2001年 京都精華大学デザイン学部建築学科卒業/2001-2008年 アライアーキテクツ一級建築士事務所/2009年 Enjoy And Architecture EANA(イアナ)共同設立
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
本作品は、世田谷区の新興住宅地に立地する約192m2の敷地に建てられた4住戸の共同住宅であり、オーナー住戸および3軒の賃貸住戸からなる。通常の賃貸住宅では住人間のコミュニティは形成されにくいが、本作品では、中庭を囲むように4住戸を配置し、中庭を共用リビングとすることにより、住人間のコミュニティが自然に発生するような計画がなされている。各住戸へのアプローチも中庭を通るかたちに計画され、各住戸1階エントランスドアである大きな引き戸を開放すると、エントランスと中庭が一体化し、中庭の共有感が一段と高まる。
各住戸はメゾネット方式であり、平面的には決して広くはないが、ロフトを伴って立体感のある居住空間となっている。中庭の共有性を高めつつも、中庭に面する開口はほとんどなく、バルコニーを各住戸の間の狭間に設けることで、各住戸のプライバシーにも配慮が払われている。
ロフト空間をそのまま外観に表したボリューム、中庭に面する開口を抑制することで生じる壁と開口部のメリハリ感など、限られた予算の中で、外観上も通常の小規模共同住宅とは異なる建築的な味わいを生み出している。
これらの建築的工夫によって、本作品は、共有性とプライバシーをバランスよく兼ね備えた住空間と、通常のアパートとは異なる良好な建築的雰囲気を備えた共同住宅となっている。この点が高く評価され、共同住宅部門優秀賞に選ばれた。
(小林 克弘)
小林 克弘(こばやし・かつひろ)
1955年 生まれ/1977年 東京大学工学部建築学科卒業/1985年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了、工学博士/東京都立大学専任講師、助教授を経て、現在、首都大学東京大学院都市環境科学研究科建築学域教授/近著に『建築転生 世界のコンバージョン建築Ⅱ』鹿島出版会、2013年、『スカイスクレイパーズ──世界の高層建築の挑戦』鹿島出版会、2015年など