塩野山の家
野生司環境設計
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 戸建住宅部門|奨励賞
建築主:
石川 譲史、石川 康子
設計:
株式会社野生司環境設計
施工:
第一建設株式会社
所在地:
長野県御代田町
主要用途:
専用住宅(別荘)
構造:
木造
階数:
地上1階
竣工:
2013年4月
撮影:
梶原 敏英
設計趣旨:
森が好きな住まい手は、軽井沢周辺に「自然の中でカーテンを閉めずに過ごす居場所」を望んで探し続け、やっとこの土地を探し当てた。約1,300坪の南北に長い敷地の東西方向は国有林が続いており、周囲の視線がまったく気にならない。南に向けて緩やかな傾斜地の敷地北側に建物を配置することでカラマツ林を見下ろす眺望が得られるようにした。
都心の住宅とは違い、別荘では四季折々に変化する自然をいかに感じられるかが大切であるため、建物は極力シンプルであることを心掛け、長さ21m×幅4.5mのシンプルな長方形平面とした。その中央部に1日のほとんどを過ごすリビングスペースを配した。南北方向がすべて開口部で構成されており、まるで林の中で生活しているかのようだ。
両サイドには耐震要素を盛り込んだ主寝室、ゲスト用寝室そして水回りを配し、廊下をつくらずにダイレクトに各部屋へ移動できる目の字プランとした。
外から見るとねじれた形状の屋根は、先端の庇を設けることで登り梁の開きを制御し、登り梁(シザースビーム)を両サイドから相互に部材を挟み込み規則正しく寸法を変えながらずらしていく木造HPシェル構造にすることで、変化のある室内空間が実現できた。コンパクトでありながら、必要な機能を備え、ミニマムで美しい別荘は『自然との対話』を肌で感じることができる特等席となっている。
(野生司 義光)
野生司 義光(のうす・よしみつ)
1949年 東京都生まれ/1973年 千葉工業大学建築学科卒業後、松田平田坂本設計事務所(現松田平田設計)/1991年 野生司環境設計 設立/現在、株式会社野生司環境設計代表取締役
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
長野新幹線の軽井沢で「しなの鉄道」に乗り換え、3つ目の御代田駅から車で30分ほどの分譲別荘地。分譲区画4つほどの広さのある南北に長い敷地は、南斜面の木立の中にありました。東西の隣地がカラマツの国有林なので、北側に建物を配置することで、周囲の視線をまったく気にせずに過ごせる別荘空間が演出されています。
小規模でシンプルな建物は、南北がすべて開口部になり、開口部の大きさは、幅、高さ共にペアガラスの最大寸法で決められているということでした。
平面図だけを見るとこれといった特徴はないのですが、両流れの屋根の棟が対角線にとられ、室内空間に変化とゆとりを演出しています。地場産の太い木材で細かいピッチの垂木を組み、それを露出することによって生活空間に温もりと安らぎを与えています。
無駄のない平面計画と、空間の変化で自然との対話を重視した手馴れた設計手法は奨励賞に値します。
(西倉 努)
西倉 努(にしくら・つとむ)
一般社団法人東京都建築士事務所協会会長代行(副会長)
1948年生まれ/1970年日本大学工学部建築学科卒業/現在、株式会社ユニバァサル設計事務所 代表取締役会長