三輪さんの家
ニコ設計室
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 戸建住宅部門|優秀賞
建築主:
三輪 恭之、三輪 かすみ
設計:
一級建築士事務所 ニコ設計室株式会社
施工:
株式会社匠陽
所在地:
東京都杉並区
主要用途:
専用住宅
構造:
混構造(鉄筋コンクリート+木)
階数:
地上2階、地下1階
竣工:
2012年7月
撮影:
西久保 毅人
設計趣旨:
木陰の居場所
計画地は、都市の住宅密集地の突き当たりに位置する旗竿敷地である。と同時に敷地奥の2面が生産緑地に接しており、この場所はふたつの極端な環境を繋ぐ役割を持っている。その特徴のどちらかを否定するのでなく、どちらの連続でもあるような体験を生み出す建築を考えた。
具体的には1FLを1.4mほど地面から上げること。一般的な1階と2階の間に生活レベルを設定することで、接道側には縁の下のような場所が生まれ、街の続きの場所であるような佇まいとした。
内部においては、船の上から海原を見ているような新鮮な緑地との関係をつくり出し、同時に緑地側に属する木陰の下にいるような、守られつつ、連続した場所となるように考えた。
街の続きであり、緑地の続きでもあるというある意味「どっちでもあり、どっちでもない」ことが、ふたつの環境との新鮮な関係をつくり出している。
(西久保 毅人)
西久保 毅人(にしくぼ・たけと)
1973年 佐賀県生まれ/1995年 明治大学理工学部建築学科卒業/1997年 同大学院修了/1997年 象設計集団、1998年アトリエハルを経て、2001年ニコ設計室設立/現在、明治大学兼任講師
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
杉並区にある住宅密集地の旗竿敷地に建つ住宅である。敷地は隅々までぎりぎりに利用され、南、東2面の栗や果樹の生産緑地の広がりと明るさを最大限利用した住宅である。居間・食堂のレベルは緑地との境界塀に合わせて1.4mの高さに設定され、居間の外側にすのこデッキが塀の高さに設えられ、居間の空間は生産緑地と一体化し気持ちのいい環境が生み出されている。
この居間の中心にキッチンと連続した大テーブルと畳の間が設置され、この住宅全体の中心空間をつくっている。この居間空間の天井は、中心はモルタル塗りの四角い板状の天井があり、その外側に開口上部の下がり壁に放射状の木ルーバーが四方に広がっていて、天井高のゆとりを見せながら外部の緑地へ連続している。
地下にはアトリエ・書斎があり、施主の趣味であるダイビングの海の中のような蒼黒い空間で演出されている。設計者は回遊動線を狭い空間に仕掛け、玄関から収納の中を通って厨房・居間と繋がる動線、2階への中央階段から洗面室を通り抜け、バルコニーから屋上へ上がる動線など、どんな細かな空間も無駄にしない設計がなされている。
浴室も北・隣地斜線によって低い天井高にせざるを得ないところを、大きな透明ガラスの天井にして、星空の浴室にしてしまうなど、設計の楽しさを十分に発揮した秀逸な住宅が生まれている。
(中村 勉)
中村 勉(なかむら・べん)
建築家、一般社団法人東京建築士会 会長
1946年東京都生まれ/1969年東京大学工学部建築学科卒業/1969〜77年槇総合計画事務所/1977〜88年AUR建築・都市・研究コンサルタント/1988年中村勉総合計画事務所設立