道の駅しょうなん てんと
設計|NASCA
第49回東京建築賞|一般部門一類 最優秀賞
南側外観全景。
  • 南側外観全景。
  • 共通ロビーより南方向を見る。
  • 「芝生ひろば」に面する「大屋根ひろば」。右奥に手賀沼が広がる。
  • 平面図
  • 断面図
建築主:
柏市
表彰建築士
事務所:
有限会社ナスカ一級建築士事務所
施工:
広島・古川特定建設工事共同企業体
城山・森特定建設工事共同企業体
岡田・トキワ特定建設工事共同企業体
日進・三和特定建設工事共同企業体
所在地:
千葉県柏市箕輪新田59-2
主要用途:
店舗
構造:
S造
階数:
地上1階
敷地面積:
35,452.08㎡
建築面積:
3,062.62㎡
延床面積:
2,949.37㎡
竣工:
2021年9月
撮影:
淺川 敏
設計趣旨:
 道の駅は、公共が施設を建設し、運営を民間事業者に委託する「公設民営」である。半分は商業施設で、半分は公共的な機能を持っていなければならない。つまり、単なる商業施設ではなく、地域の資源である手賀沼を回遊させるための役割を担い、人びとが集まり、地域を楽しむための「出発の場」であり、「到着の場」、そして「出会いの場」となるような施設である。
 約40,000㎡の広大な敷地に対し、ひと目で分かるシンボルになることが必要だったため、農業ハウスの屋根勾配を模った家型を連ね、農村地域の風景に溶け込む建築とした。また、67.5m四方の矩形平面の角を45度でカットすることで、我孫子(南東)・柏(南西)・手賀沼(北西・北東)方面からのアプローチに対してそれぞれの正面性と誘引性をつくり、どこからでも人びとを迎え入れるような「多彩な表情を持つ建築のあり方」を考えた。この建築がさまざまな点と点を繋ぐ、地域のターミナルステーションとなること願う。
(桔川 卓也)
桔川 卓也(きっかわ・たくや)
NASCA
1984年 静岡県生まれ/2007年 日本大学理工学部海洋建築工学科卒業/2008年 NASCA/2017年 NASCA主任/2018年〜日本大学理工学部非常勤講師
選考評:
 屋根の下に広がる開放的な空間が魅力的な「道の駅」の計画。施設は地域のゲートとしての役割に加え、地域活性化の拠点を担う公共施設としての役割も期待されていた。設計者はその問いかけに対して、もともと敷地に広がっていた農業ハウスの連続した切妻屋根にインスピレーションを受けた大屋根を提案することで答えた。
 興味深いのは、これをさらに45度振った角度で切り取ることで、ともすれば見慣れた感もある連続切妻屋根というモチーフを一変させ、建築の内外をつなぐ「発明」とでもいえそうな提案を試みていることだろう。
 設計者は「パースペクティブな効果」を狙ったと説明されていたが、ボリュームを45度でカットすることで遠近感が強調され、独特の存在感を示している。この45度カットにより同時に、屋外空間から軒下へ、さらには軒下から内部空間へとつながる、矩形の空間ではつくりえない独特な流動感も生まれている。切妻屋根のディテールや構造も丁寧に検討されていて、地域の交流の場にふさわしい空間が生み出されている。こうしたハードウェア部分での丁寧な設計に加えて、オペレーションとのすり合わせも徹底されているなど、高い評価に値する作品である。
(山梨 知彦)
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計チーフデザインオフィサー、常務執行役員
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計