ニコタマテラス
設計|奥野公章建築設計室
第49回東京建築賞|共同住宅部門 奨励賞
東側の斜面上部より見る。
  • 東側の斜面上部より見る。
  • 南西より俯瞰する。
  • I住戸地階を見下ろす。
  • D住戸2階。東方向を見る。天井高さ3,825mm。
  • G住戸2階。北方向を見る。
  • E住戸地階。北方向を見る。
  • 地階平面図
  • 1階平面図
  • 2階平面図
  • 断面図
建築主:
ニコタマテラス
表彰建築士
事務所:
一級建築士事務所奥野公章建築設計室
施工:
株式会社東京組
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
長屋
構造:
RC造(耐震壁付きラーメン構造)
階数:
地上2階、地下1階
敷地面積:
724.72㎡
建築面積:
289.05㎡
延床面積:
792.89㎡
竣工:
2020年5月
撮影:
中山 保寛
設計趣旨:
 二子玉川の国分寺崖線の中腹に位置するコーポラティブハウスである。まむし沢と呼ばれる坂道に面する敷地は崖線の条例にも守られ、武蔵野台地の自生種に囲まれた緑豊かな場所であった。敷地内には10m近い高低差があり、この高低差がつくる景観と緑の環境を活かした建築を考えた。建物は崖線の緑豊かな景色の軸と、多摩川へと下っていく都市的な景色を軸にして鉤型とし、敷地内の擁壁と建物に囲われた中庭をつくるように配置した。住民はこの長屋通路を兼ねた中庭からアプローチする計画としている。
 住戸は1階~地階のメゾネットと、1階~2階のメゾネットで構成されている。敷地形状より10mで2階建てまでしか計画できない立地であることを逆手に、地階と2階は1.5層の階高(天井高さ3.5~4.0m)のボリュームをもつスケルトンとした。住戸ごとにロフトや床下収納としたり、天井高さを楽しんだりと立体的で変化に富む豊かな住空間となっている。
(奥野 公章)
奥野 公章(おくの・まさあき)
奥野公章建築設計室
1973年 山梨県生まれ/1996年 東洋大学工学部建築学科卒業/1998年 東洋大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程修了後、1998〜2002年 スタジオ建築計画/2002年 家具設計ユニット「ホワイトベース」共同設立/2002年 奥野公章建築設計室設立/現在、東洋大学、関東学院大学、武蔵野美術大学非常勤講師
選考評:
 かつて渓谷であった坂道に面する10戸からなるコーポラティブハウスである。瀬田玉川神社を頂上に東から西へと下っていく崖線の緑の景色の軸と、北側隣地の借景から多摩川へと下っていく南北の景色の軸を活かした配置とするために建物が鈎型に配置され、擁壁との間にできる空間が、長屋通路を兼ねた住民のコモンスペースとなっている。緑の谷や屋上の植栽は武蔵野台地の緑の景色を形成する自生種が植栽され、将来的には瀬田玉川神社の木々のように大きくなり、国分寺崖線の原生の景色継承する森の中の住まいとなることが意図されている。
 住戸は1階+地階のメゾネットタイプと1階+2階のメゾネットタイプで構成されている。2階と地階は3.2m~3.8mの天井高があり、2階では、天井までの大開口で周辺の緑の景色とつながる空間となり、地階では、敷地内の高低差を利用することで庭と繋がる空間となっている。
 高天井・大開口の建築計画に対する適切な温熱環境設計もなされ、住まい手の希望が叶えられるコーポラティブハウスの強みが発揮され、ロフトを組み込んで使ったり、そのままの大きな天井高さを楽しんだりと、住戸ごとに立体的で変化に富む豊かな生活空間住が創出されている。
(伊香賀 俊治)
伊香賀 俊治(いかが・としはる)
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授
1959年生まれ/早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了/(株)日建設計 環境計画室長、東京大学助教授を経て、2006年より現職/専門分野は建築・都市環境工学/博士(工学)/日本学術会議連携会員、日本建築学会副会長