チドリテラス
設計|フジワラテッペイアーキテクツラボ
第49回東京建築賞|共同住宅部門 最優秀賞
北東より俯瞰する。
  • 北東より俯瞰する。
  • 中庭と西側のサンクンガーデン。
  • 地階東側のサンクンガーデン。
  • 1階東側住戸。
  • 配置・屋階平面図
  • 1階平面図
  • 地階平面図
  • 断面図
建築主:
久が原テラス建設組合
表彰建築士
事務所:
株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ一級建築士事務所
施工:
株式会社FORM GIVING
所在地:
東京都大田区千鳥1-1-16
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造
階数:
地上3階、地下1階
敷地面積:
884.24㎡
建築面積:
451.76㎡
延床面積:
1,578.73㎡
竣工:
2021年12月
撮影:
西川 公朗
設計趣旨:
 「チドリテラス」は、東京の住宅地の第1世代ともいえる大邸宅の土地と庭を、18戸の集合住宅として継承していくプロジェクトである。
 コーポラティブハウスでしか成し得ない豊かなコモンスペースの中庭、街と共有する境界面のまち庭、コモンとプライベートが織り混じる屋上庭園を計画し、この土地の庭の物語を継承している。
 18住戸それぞれが異なる平面形式を持ち、どの住戸も庭的な環境を持てるように、建築の境界面を丁寧に設計している。
 西側のサンクンガーデンと東側のサンクンガーデンというふたつの光と風を取り込む環境をつくることで、半地下住居、地下住居であっても2面採光または3面採光が可能になるように工夫している。
 周辺の住宅地と高さや雁行のスケールを合わせ、街と庭と住戸が各所でつながるよう設計している。
 これらの複雑な全体像を可能とするシステムとして、明快な背骨に幹線を通した設備システムと、壁式構造とフラットスラブによる有機的な構造計画を採用している。
(藤原 徹平)
藤原 徹平(ふじわら・てっぺい)
フジワラテッペイアーキテクツラボ、横浜国立大学大学院Y-GSA准教授
1975年 横浜生まれ/1998年 横浜国立大学卒業/2001年 横浜国立大学大学院修了/2001–12年 隈研吾建築都市設計事務所勤務/2010年 一般社団法人ドリフターズインターナショナル設立 理事/2012年 株式会社フジワラテッペイアーキテクツラボ設立 主宰/2012年 横浜国立大学大学院Y-GSA准教授
選考評:
 大田区千鳥町に建つ18戸からなるコーポラティブハウス。かつては大邸宅が建っていた屋敷跡に、既存の大樹や周辺の緑、元からある小径、近所の「くさっぱら公園」との接続などが入念に検討されており、さらに落差のある敷地を活かした快適で閉塞感のない集合住宅を実現した。それぞれの住戸のオーナーからの要望を丹念に汲み取り、地階から屋上階まですべてプランの異なる、立体パズルのような多様な住居の複合体を計画した手腕は見事である。
 建物容積に算入されない地下階の住居を最大限に取り込んでいるが、いずれも解放感のあるドライエリアを併設し、豊かな光が差し込む地下とは思えない地下居室が生まれている。雁行する平面にX、Y両方向の耐震壁を巧みに配置し、それ自体がRC造の堅牢さと安心感をもたらすものとして象徴的に働いている。
 さまざまなレベルに計画された各戸へのアクセスも、必然的に多種多様なものとなるが、住戸によっては共用部からのテラスアクセスが半ば開放されていたりして、集合住宅にありがちな他人を疎外する共用部廊下の冷たさがない。さながらヨーロッパの山岳都市の細街路を逍遥するようで、とても楽しい空間となっている。
(古谷 誠章)
古谷 誠章(ふるや・のぶあき)
建築家、早稲田大学教授、NASCA主宰
1955年 東京都生まれ/1978年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1980年 早稲田大学大学院博士前期課程修了/1990年 近畿大学工学部助教授/1994年 早稲田大学理工学部助教授/1994年 NASCA設立/1997年 早稲田大学理工学部教授(現・創造理工学部教授)/2017年 日本建築学会 会長/2021年 東京建築士会 会長