プラウド上原フォレスト
設計|竹中工務店
第49回東京建築賞|リノベーション賞
南東側ファサード。内部化した3層吹き抜けエントランスホールを付与している。*
  • 南東側ファサード。内部化した3層吹き抜けエントランスホールを付与している。*
  • エントランスホール。*
  • リビングダイニング1。*
  • リビングダイニング2。*
  • 増築棟。北東側ファサード。*
  • 計画概要
  • 【Before】南東側ファサード。
  • 【Before】エントランス。
  • 【Before】リビングダイニング1。
  • 【Before】リビングダイニング2。
  • 【Before】北東側外観。
建築主:
野村不動産株式会社
表彰建築士
事務所:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社 竹中工務店
所在地:
東京都渋谷区上原2-14-2
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造
階数:
地上3階、地下1階
敷地面積:
1,862.97㎡
建築面積:
1,114.90㎡
延床面積:
3,823.13㎡
竣工:
2020年1月
撮影:
*ミヤガワ
設計趣旨:
 良質な既存ストックの1棟リノベーションは例が少なく、新築前提の用地取得によるスクラップ&ビルドがほとんどを占める。本計画はその潮流に対するオルタナティブである。
 35年を経た既存建物には、現代では得難いデザインや成熟した緑が遺されていた。経年でしか得られない価値を継承しながら、「内装・設備改修による居住性能向上」、「躯体安全性の確保」とともに、「容積を使い切る増築」を共存させることで、敷地ポテンシャルを最大限活用できると考えた。
 改修においては、個別空調への全更新によるダクト増大に対応するため、3Dスキャンを用いた既存躯体調査を実施。既存スリーブを最大限活用しつつ、共用部に設備ボイドを設けて機器類を屋上へ集約することで、外壁の新設開口を最小限とした。増築棟はガラスとアルミフレームによる端正なファサードとし、様式的な既存棟と「対比的な調和」を図るよう、周辺の緑や景色を写し込んで透過する。
 改修と増築のハイブリッドによって、現代に合わせた住環境を付加する既存ストックの継承を実現した。
(佐田野 剛、鈴木 智也)
佐田野 剛(さだの・つよし)
竹中工務店東京本店設計部設計第1部長
1965年 岡山県生まれ/1988年 芝浦工業大学工学部建築学科卒業/1990年 東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、竹中工務店入社
鈴木 智也(すずき・ともや)
竹中工務店東京本店設計部
1990年 岐阜県生まれ/2013年 名城大学理工学部建築学科卒業/2015年 名古屋工業大学大学院工学研究科社会工学専攻修了後、竹中工務店入社
選考評:
 良質な既存ストックであっても、多くの建築が新築前提ではスクラップ&ビルドが起きてしまう。この建築は、竣工当時から容積緩和がなされた容積未消化に注目し、35年経過した既存建物の価値を継承しながら、内装・設備改修による居住性能向上、躯体安全性の確保とともに、容積を使い切る増築を共存させることで敷地のポテンシャルを最⼤限活⽤した計画である。
 既存建物を生かすために、設備全更新に対応した3Dスキャンによる既存スリーブの調査と利用最大化、共用部の設備ボイド設置と機器の集約、モルタル剥離技術による外壁再生などさまざまな既存を利かす技術がなされている。特に、建物の中性化深さとかぶり厚さを現地調査し、仕上げ、ならびに、コンクリートの中性化抑制効果の評価と進行を予測して、残存耐用年数を再計算の後、65年の耐用年数の証明と第三者の評価取得、さらに増改築物件として初の長期優良住宅認定など、安全安心を建築主に提供したことは注目に値する。改修と増築のハイブリッドによって、現代に合わせた住環境を付加する既存ストックの継承を高い技術力で実現したことを評価したい。
(奥野 親正)
奥野 親正(おくの・ちかまさ)
構造家、株式会社久米設計環境技術本部構造設計室室長
1968年 三重県生まれ/1991年 明治大学工学建築学科卒業/1993年 明治大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/1993年 久米設計