FLATS WOODS木場
設計|竹中工務店
第48回東京建築賞|東京都知事賞、共同住宅部門最優秀賞
北東側外観。江戸時代からの木の集積地、木場エリアから都市木造建築を発信する。*
  • 北東側外観。江戸時代からの木の集積地、木場エリアから都市木造建築を発信する。*
  • 天然木を用いた外装が有機的な都市景観を生む。*
  • 木柱のある個室。
  • 異業種の入居者が交流する最上階(12階)カフェテリア。*
  • 12階カフェテリアのCLT床の建方。
  • 12階平面図
  • 断面図(南北)
建築主:
株式会社竹中工務店
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都江東区東陽3-25-12
主要用途:
共同住宅(252戸)
構造:
鉄筋コンクリート造+木造+鉄骨造
階数:
地上12階
敷地面積:
2,466.74㎡
建築面積:
914.03㎡
延床面積:
9,150.73㎡
工事期間:
2018年10月〜2020年2月
撮影:
*FOTOTECA
設計趣旨:
 江戸時代からの木材の集積地となっている江東区木場エリアに建つ、12階建ての寮の計画である。
 急速に進む世界的な木造技術の発展の中、日本の厳しい耐火・耐震基準に適合した多くの技術を開発することにより実現した。日本の都市圏で中高層都市木造が可能であることを実証し、持続可能社会実現のための建築のあり方を示すひとつのモデルとなる。
 建物は複数の企業でシェアする寮として使用され、入居者の交流の鍵となる最上階の共用部を積極的に木造木質の空間とした。木構造の柱梁、天然木仕上げ・左官仕上げなどをふんだんに用いた心地のよい空間は、住民同士の交流やクリエイティブなワークショップに利用される。
 この建築は、より多くの人に木造建築の可能性と木の心地よさを発信し、現代の無機質ともいえる都市の景観を、より有機質なものに変えていくものとなる。(梅野 圭介、田口 裕子、島田 潤)
梅野 圭介(うめの・けいすけ)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第5部門 設計4グループ長
1972年 熊本県生まれ/1995年 東京工業大学建築学科 卒業/1997年 東京工業大学大学院 修士課程修了後、竹中工務店入社
田口 裕子(たぐち・ゆうこ)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第5部門 設計4グループ
1980年 福岡県生まれ/2004年 九州芸術工科大学芸術工学部環境設計学科 卒業/2006年 九州大学大学院 修士課程修了後、竹中工務店入社
島田 潤(しまだ・じゅん)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第4部門 設計3グループ
1989年 滋賀県生まれ/2012年 東京大学工学部建築学科 卒業/2013年 フランス国立建築学校パリ・ラビレット校留学/2014年 OMA / Office for Metropolitan Architecture New York/2016年 東京大学大学院 修士課程修了後、竹中工務店入社
選考評:
 厳しい防耐火・耐震性能が要求される都市における高層木造建築の可能性に、果敢にチャレンジし具現化した共同住宅である。
 共同住宅(単身寮)としての建築計画的な視点からは、特に目新しいものではないが、特筆すべきは、木造・木質建築の可能性を、技術的にもデザイン的にも徹底的に追及している点にある。持続可能な森づくり、全国区での木のサプライチェーンの構築から始まり、木による耐火・耐震技術の開発、施工性を考慮した工法の開発等、組織の持つ高い技術力と行動力を引き出すことで高い理想を実現している。
 主体構造をRC+木のハイブリッド構造とし、今まで蓄積してきた都市木造の要素や技術に加え、新規に開発した多様な木質構造技術が素晴らしい。2時間耐火の柱、鉄筋入りの集成材による構造部材、接合部を波状に加工して組み合わせるCLT床材、CLTの耐震壁、手積みが可能なCLTによるブロック耐震壁等、ここで用いられている多くのシステムがほとんど木現しのまま使用されていることもこの建築の大きな魅力につながっている。
 サステナブルな街づくりを目指す大都市東京の中で、今後、より求められるであろう都市木造を高層木造建築として見事に実現し、その大きな可能性を実証したこのプロジェクトは、東京都知事賞にふさわしい建物として高く評価したい。(宮崎 浩)
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
建築家、株式会社プランツアソシエイツ
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立