港区立郷土歴史館等複合施設「ゆかしの杜」
設計|日本設計
   大成建設、香山建築研究所、JR東日本建築設計
第47回東京建築賞|一般二類部門優秀賞
西側正面外観。**
  • 西側正面外観。**
  • 2階中央階段(着手前)。*
  • 2階中央階段(改修後)。**
  • 展示室。**
  • コミュニケーションルーム。**
  • 2階平面図
  • プログラム配置断面ダイアグラム
建築主:
港区
基本設計・実施設計監修・監理:
一級建築士事務所株式会社日本設計
実施設計:
大成建設株式会社一級建築士事務所
一級建築士事務所有限会社香山建築研究所
一級建築士事務所株式会社JR東日本建築設計
施工:
大成建設株式会社
東光電気工事株式会社
ダイダン株式会社
株式会社三晃空調
所在地:
東京都港区白金台4-6-2
主要用途:
郷土歴史館、がん在宅緩和ケア支援センター、子育て関連施設等
構造:
SRC造
階数:
地上6階、地下1階、塔屋4階
敷地面積:
11,173.17㎡
建築面積:
2,823.16㎡
延床面積:
15,155.20㎡
工事期間:
2016年10月〜2018年2月
撮影:
*港区、**三輪晃久写真研究所
設計趣旨:
 緑深き白金台の杜に位置する旧公衆衛生院(内田祥三設計、1938年竣工)を、港区が保存再生し、郷土歴史館、がん在宅緩和ケア支援センター、子育て関連施設等の複合用途に用途変更して、生きた文化遺産「リビング・ヘリテージ」として活用する計画である。
 歴史的建造物のオーセンティシティを守りながら、新用途の要求性能を満たした上で、改修後に区の有形文化財指定を目指した。設計に先立ち設定された保存活用の基本理念と設計の原則に基づき、既存部分に手を加える際の新旧の区別や、改修範囲を最小限に抑えるミニマムインターベンションなど、現代の修復理念を適切に取り入れた。
 完成後の文化財指定とその運用を視野に、建物の部分ごとに保存ランクを設定し、耐震補強や新用途で改変する部分を確認しながら改修を進めた。この結果、創建時の建物の風格を蘇らせながら、耐震化やバリアフリー化、設備更新が図られ、安心安全な公共施設として再生された。
(内藤 浩司、輿石 秀人)
内藤 浩司(ないとう・こうじ)
日本設計リノベーション設計部シニアアーキテクト
1969年 兵庫県生まれ/1994年 早稲田大学大学院理工学研究科修了後、日本設計入社/2010年 UCLユニバーシティ・カレッジ・ロンドン サステイナブル・ヘリテージ修士課程修了/現在、日本設計リノベーション設計部シニアアーキテクト
輿石 秀人(こしいし・ひでと)
大成建設設計本部建築設計第五部設計室長
1968年 広島県生まれ/1992年 武蔵工業大学工学部建築学科卒業後、大成建設入社/現在、同社設計本部建築設計第五部設計室長
選考評:
 1938年竣工の旧公衆衛生院(内田祥三設計)を港区の郷土歴史館、がん在宅緩和ケア支援センター、子育て関連施設等の複合施設として用途変更した延床面積約15,000㎡の大規模な近代建築の改修工事である。設計から工事監理の中で、設計チームが最も力を入れているのは、現行法規に適合する耐震化、バリアフリー化、設備更新等を前提として、創建当初の建物の質・デザインの復元に対して、丁寧に検証を行っている点にあると思う。
 保存改修設計の原則をはっきりと事前に決定した上で保存ランクを6区分に設定し、歴史的価値が認められる重要な部分に関しては、安全性を確保した上で最小限の介入にとどめ、建築の本質的な価値に対して十分に配慮している。一方、新たな複合用途に転用する部分に関しては、建築のデザインの骨格を守りながらも、親しみやすい空間に積極的に改修している。
 保存・再生に対する事業者(港区)の真摯な取り組み(保存活用検討委員会等による体制づくり等)も素晴らしいが、その目標を実現した各分野の専門家によるバランスの取れた設計・施工チームによる丁寧な回答のプロセスは、今後の近代建築の保存活用における設計手法のひとつの指標になると思う。(宮崎 浩)
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
建築家、株式会社プランツアソシエイツ
1952年 福岡県生まれ/1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1977〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツアソシエイツ設立/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授