渋谷パルコ・ヒューリックビル
設計|竹中工務店
第47回東京建築賞|一般二類部門優秀賞
東側より見下ろす。左にスペイン坂。右は公園通り。*
  • 東側より見下ろす。左にスペイン坂。右は公園通り。*
  • 外周を巡る立体街路。**
  • 東側外壁を見上げる。*
  • 周辺地区の歩行者ネットワーク
  • 断面図
  • 街の構成 小さな塊の集積体。
建築主:
宇田川町14・15番地第一種市街地再開発事業 個人施行者 株式会社パルコ
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
東京都渋谷区宇田川15-1
主要用途:
店舗、劇場、事務所
構造:
S造(柱:CFT造)、一部SRC造・RC造
階数:
地上19階、地下3階、塔屋1階
敷地面積:
5,385.95㎡
建築面積:
4,669.63㎡
延床面積:
63,856.03㎡
工事期間:
2017年5月〜2019年10月
撮影:
*エスエス、** Koji Fujii / TOREAL
設計趣旨:
 渋谷はストリートカルチャーが重層し堆積してきた街である。新たな投資による駅中心地区のターボアップされた賑わいを、いかに周辺エリアの蓄積された文化と触れ合わせ化学反応を加速させるか、この駅周辺地区共通の課題に対して挑戦している。渋谷全体の回遊性を高めるストリートネットワークの拡充と、パルコの発信力を活かした新たな賑わい拠点の創出、拡散性と集中性を同時に成立させることを試みた。ストリートネットワーク拡充の主軸となる建物外周を回遊する立体街路は、渋谷の谷から代々木公園の丘を目指す延長線上のように建物の一部でありながら街をめぐるような体験をつくり出している。リアル店舗の意義が問われるなか、道をつくることで街が生まれ、化学反応や混じり合いが文化をつくるというこれまでの「渋谷」、「PARCO」が築き上げた一貫した考えを継承した。
(濱野 裕司、垣谷 伸彦)
濱野 裕司(はまの・ゆうじ)
竹中工務店東京本店設計部長
1962年 東京都生まれ/1987年 東京藝術大学美術学部建築科卒業/1989年 東京藝術大学大学院修士課程修了後、竹中工務店入社
垣谷 伸彦(かきたに・のぶひこ)
竹中工務店東京本店設計部設計第1部門設計4グループ長
1977年 愛知県生まれ/1999年 京都大学工学部建築系学科卒業/2001年 京都大学大学院修士課程修了後、竹中工務店入社
選考評:
 従前、道路を隔てて分かれていたふたつの建物をひとつの街区に統合し、都市再生特別地区制度による容積率割増を活用し、建物外周部に立体街路と名付けた地上から屋上広場まで続くストリートや集会、展示、オフィスの機能を新たに付加した商業施設である。かつてふたつの建物の間を走っていた区道を新たに店舗が並ぶ歩行者専用通路として施設内に引きこみ、スペイン坂から続く建物外周を回遊する立体街路は、渋谷の谷から代々木公園の丘を目指す延長線上のように建物の一部でありながら街をめぐるような体験をつくり出している。リアル店舗の意義が問われるなか、道をつくることで街が生まれ、化学反応や混じり合いが文化をつくるというこれまでの「渋谷」、「PARCO」が築き上げた一貫した考えを継承し、コンテンツ・建物・まちづくり・都市制度のすべての領域で「にぎわい創出」、「文化情報発信」の拠点となっている。また、建築環境総合性能評価システムCASBEEで新たに導入した建築SDGs評価をいち早く試行している点も評価した。(伊香賀 俊治)
伊香賀 俊治(いかが・としはる)
慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授
1959年生まれ/早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了/(株)日建設計 環境計画室長、東京大学助教授を経て、2006年より現職/専門分野は建築・都市環境工学/博士(工学)/日本学術会議連携会員、日本建築学会副会長