大岡山の集合住宅
設計|黒川智之建築設計事務所
第47回東京建築賞|共同住宅部門優秀賞
東側前面道路より見る。
  • 東側前面道路より見る。
  • アプローチ夕景。
  • 南側に通り土間のある住戸。
  • 西側3、4階のメゾネット住戸。
  • 屋上テラス。最上階住戸の専有空間。
  • 平面図
建築主:
トゥループロパティマネジメント株式会社
設計:
一級建築士事務所株式会社黒川智之建築設計事務所
施工:
株式会社林田建設
所在地:
東京都大田区
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造
階数:
地上4階
敷地面積:
143.41㎡
建築面積:
101.79㎡
延床面積:
397.26㎡
工事期間:
2018年4月〜2019年3月
撮影:
長谷川 健太
設計趣旨:
 商業地と住宅地が混在するエリアに建つ集合住宅。敷地一帯は賃貸需要も高く、中高層集合住宅への建て替えが進む。都市生活の立体化・高密度化を受容しつつ、そうした状況を反転して都市環境としての豊かさを補う建築モデルを考察することが重要であると考えた。本計画では、敷地は間口が狭く奥行きの長い形状の敷地に対し、土間空間を住戸内に内包し、隣戸とともに「通り土間」を形成するあり方を提案している。通り土間はふたつの住戸が共用階段・廊下を挟み、室内土間を介してつながることで構成されている。この構成の単位をふたつ、コの字状に嚙合わせ、2本の通り土間が東西に貫通する計画とした。通り土間は、街の賑わいと奥に控える大学敷地の静かな環境とを結ぶ。積層化することで立体街路のような様相を生み出し、その結果、街に対しては開かれた風景、住む人にとっては鬱屈さと閉塞感から解放された、都市生活固有の居心地のよさを生み出すものと考えている。
(黒川 智之)
黒川 智之(くろかわ・ともゆき)
株式会社黒川智之建築設計事務所
1977年 神奈川県生まれ/2001年 東京工業大学工学部建築学科卒業/2003年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了/2003 – 08年 竹中工務店/2008 – 09 年 Herzog & de Meuron(文化庁 新進芸術家海外研修制度研修員)/2010 – 12年 隈研吾建築都市設計事務所/2012年 黒川智之建築設計事務所設立/2019年 株式会社黒川智之建築設計事務所に改組
選考評:
 駅近くの雑然としたまちなみにすっきりした外観がひときわ目を引く。間口が狭く奥行きの深い敷地だが裏には緑道もある。そうした立地条件を活かし、外階段を挟んで一住戸プランを左右対称にひと組、さらに反転し2組を1層として積層する。
 階段ゾーンは住戸の中まで土間空間として通し、一方、中心に集めた4戸の設備ゾーンは構造も絡めて機能させ、両側の土間空間を自由度高くしつらえることを可能にした。たったひとつの住戸タイプをよく検討し展開するこのアイデアは、恐らく設計、施工ともに効率よく納めることにつながったであろう。また冒頭に述べた外観の所以でもある。
 ワンルーム賃貸住宅のワンパターン化は住み手の意欲を減退させ、暮らしの創造性をかき立てる何かが必要と常々思っていた。自宅を建築することは稀であり時間もかかる。若い人たちが職業を持って自立する段階から、住まいの心地よさや空間の質について興味を持ち、トレーニングを重ねることができる。そうした可能性を追求した住まいづくりをディベロッパーと設計者で共有し、今後ともおおいに挑戦していただきたいとエールを送り、優秀賞とします。(平倉 直子)
平倉 直子(ひらくら・なおこ)
建築家、平倉直子建築設計事務所主宰
1950年 東京都生まれ/日本女子大学住居学科卒業/日本女子大学、関東学院大学、東京大学、早稲田大学等の非常勤講師を歴任