北小金のいえ
設計 S設計室
   中島壮設計
   Cosmopolitan/Workshop
第47回東京建築賞|戸建住宅部門奨励賞
東側外観。
  • 東側外観。
  • 1階居間・食堂。
  • 1階ホール。
  • 2階小屋裏。
  • 1階平面図
  • 2階平面図
  • 断面図
建築主:
白石 明子
設計:
株式会社S設計室一級建築士事務所
中島壮設計一級建築士事務所
Cosmopolitan/Workshop
施工:
S設計室
所在地:
千葉県松戸市
主要用途:
専用住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
144.28㎡
建築面積:
73.40㎡
延床面積:
96.01㎡
工事期間:
2018年12月〜2019年8月
撮影:
本城 直季
設計趣旨:
「生活の軸」と「地球の軸」
 緩やかな北側斜面の最下端に位置する40坪余りの敷地は、北の道路面より1.5mほど高く、その先には生産緑地が広がっている。
 老夫婦の終の住処として「庭のある平屋」を建てるのには少し物足りない広さであったが、庭/テラス/ポーチ/カーポートを敷地四隅に分散配置することで、対角の軸を導入、視線・動線を敷地内で最大限に伸長させて北西へと開き、これを「生活の軸」とした。
 また、北向きの1階居室レベルでは得難いダイレクトゲインを補うため、屋根面で温めた空気を基礎蓄熱経由で床暖房とする温熱環境計画を採用し、屋根面が集熱に最適化されるよう「地球の軸」に沿わせた。屋根形状のデザインが制限されることの多い従来のソーラーシステムを、開発元と協働して検討し今後の設計の幅が広がるデザインへと着地させることができた。
 捻れたふたつの軸が矯正されることなく共存することで、生き生きとした住宅の原型を形成している。
(白石 圭、橋本 圭央)
白石 圭(しらいし・けい)
S設計室
1977年 千葉県生まれ/2002年 東京藝術大学美術学部建築科卒業/2008年 Cranbrook Academy of Art Dept. of Architecture (M.Arch) 修了/2009 – 11年 N設計室勤務/2011年 S設計室開設
橋本 圭央(はしもと・たまお)
Cosmopolitan/Workshop
1976年 高知県生まれ/2001年 東京藝術大学美術学部建築科卒業/2008年 AAスクール Diploma Program 修了/2013年 Cosmopolitan/Workshop設立/現在、日本福祉大学専任講師、東京藝術大学、法政大学非常勤講師
選考評:
 千葉県松戸市北小金駅周辺に広がる住宅地の中に計画された。建築主は設計者の両親なので自邸を設計するように自由な発想で取り組めたと思う。敷地はほぼ正形で北下りの傾斜地にあり北側は生産緑地で開けた環境にある。この敷地の中にあえて45°にずらした正方形の平面型を置き、その四隅を切り落として外部テラスを計画することによって特異な内部空間を実現している。
 広々とした北側の緑地に向けたテラスと、東側の明るい日差しを受けるテラスに囲まれたリビングは、高い吹き抜け天井とともに居心地のよい場所となっている。シンプルで簡素にしつらえられた内部仕上げと押えられたディテールにもこの居心地のよさに生かされている。
 平面で4隅を落とした構成が屋根形状に反映されて、中央の高い切妻屋根と4周に張り出した庇屋根の構成が周辺の住宅の中で際立っている。この屋根を利用したソーラーシステムを採用し、南面する屋根の先端から空気を取り入れ強化ガラスによる集熱部を通過して立ち下りダクトにより床面へ導き床暖房するという技術開発も試みている。特筆すべきは設計者は友人とともに自ら現場施工にも挑み、設計施工でこの住宅を完成させたという。設計施工を行うことによる仕上げの精度や、コストの削減等、さまざまな経験がこれからの建築作品創造に寄与すると思われる。(岡本 賢)
岡本 賢(おかもと・まさる)
建築家、一般社団法人日本建築美術協会 AACA建築賞選考委員
1939年東京都生まれ/1964年 名古屋工業大学建築学科卒業後、株式会社久米建築事務所(現・株式会社久米設計)/1999年 同代表取締役社長/2006年 社団法人東京都建築士事務所協会副会長/2014年 一般社団法人日本建築美術協会会長