山梨県立図書館
久米設計・三宅建築設計事務所共同企業体
第40回建築作品コンクール 一般部門二類最優秀賞
施工:
清水建設・早野組・国際建設共同企業体
建築主:
山梨県
所在地:
山梨県甲府市
主要用途:
図書館
構造:
S造・RC造・SRC造
撮影:
小川泰祐
設計趣旨:
甲府駅北口に建つ、都市活性化も担う図書館である。
駅前の賑わい創出も含め、図書館の社会的機能の拡大を図るため、より多くの利用者層と利用形態を獲得すること。さらに単なる読書から人と人との対話型知的創造活動へと移行を促す図書館を目指し、静寂を強いる従来型図書館ではなく、イベントや待ち合わせに来た人、観光客や子供たちが自由に会話し交流できる場とした。
計画的には、交流エリア(イベント施設)と開架エリアを一体化し、AVコーナーや開架書架、交流ルームやテーブルテラスを混在させることで、本やイベントを介して利用者が交流し合い、新たな知的活動を展開できる場としている。同時にサイレントルームによる静かな読書と会話との共存、館内の活動を互いに感じ取れるオープンな空間構成等の計画手法を採用した。
また出力105kwの太陽光パネルや大規模な北側採光、650m2の緑化カーテンウオールの採用等、環境への配慮も重視した。
(野口 英世/久米設計、三宅 勝志/三宅建築設計事務所)
審査評:
この作品は、甲府市の甲府駅北口広場に面した文化会館の並びに位置する県立図書館である。街中の賑わい創出拠点としての位置づけや静寂な閲覧機能とイベントや観光拠点としての機能、さらに市民の通り抜けや自由に憩え親しみある場を併せ持ち一体的に利用のできる新しい形態の図書館、「情報のフードコート」をテーマに計画が始まった。
そのため設計者は、地元で馴染みのある「ぶどう籠」、「ぶどう棚」をモチーフに鉄骨フレームで36m×72mの三層吹抜けの大架構によるガラス張りワンボックス空間とRC造の四層コアを組合せで成立させた。外観は、格子状に編まれた鉄骨フレームで壁面緑化されさたカーテンウォールがぶどう籠を意識させるし、RC壁に嵌め込まれたクラッシュガラスが水晶をイメージさせて地元らしさを高揚させている。
屋内では屋根を鉄骨トラスに帯状の下弦材を技術的な工夫を加え、天井いっぱいに弧を描きぶどう棚が出現している。その上、屋根をノコギリの刃のようにし垂直北面から自然採光と傾斜南面の屋根に太陽光発電パネルを載せ、外周壁ガラス面と共に屋内に豊かで柔らかい自然光が降り注ぐ屋内環境となっている。
全体は自由に会話やワーキングのできる場や利用者が気軽に本と接し、交流し合うといった場が創出されている。サイレントルームも用意され様々な利用のシーンに対応できる仕掛けとして一体化が実現している。省エネルギーにも配慮され、開館一年あまりで100万人に達し、市民にも支持された施設は、新しい図書館に一石を投ずるものと期待が持て、周囲のまちなみに調和した作品として高く評価され最優秀賞に選ばれた。
(福島 賢哉/(株)賢プランズ設計事務所・代表取締役)