有明体操競技場
基本設計・実施設計監修・監理|日建設計
実施設計・施工|清水建設
技術指導|斎藤 公男
第47回東京建築賞|東京都建築士事務所協会会長賞、一般二類部門最優秀賞
北側アプローチより見る。
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  • 木梁詳細図
発注者:
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
基本設計・実施設計監修・監理:
株式会社日建設計一級建築士事務所
実施設計:
清水建設株式会社一級建築士事務所
技術指導:
斎藤公男
施工:
清水建設株式会社
所在地:
東京都江東区有明1-7-4
主要用途:
競技場(後利用時:展示場)
主体構造:
鉄骨造 屋根:木造
階数:
地上3階
敷地面積:
96,433.5㎡
建築面積:
21,261.3㎡
延床面積:
39,194.3㎡
工事期間:
2017年11月〜2019年10月
撮影:
鈴木 研一
設計趣旨:
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の会場である。地球温暖化などの環境問題が深刻化する現在、木という、恐らく建築材料の中で唯一使用することが環境保全・改善につながる材料を、最大限活用し、かつての貯木場の記憶をかたちに残すことを目指した。
 選手と観客を包む、大きな木の弧の構造体と、それを支える観客席の勾配をそのまま外観として現し、木の大きな軒下の縁側空間で世界各国の人びとを招き入れる。無駄のないシンプルな構成と、自然と共生する木の空間が、日本らしさにつながるのではないかと考えた。
 大断面集成材の大梁による、スパン90mに及ぶ木質大空間を実現するために、木大梁両端の天秤型キャンチ梁部分に地組みした張弦梁をリフトアップして接合するという「複合式木質張弦梁構造」を考案。
 今回のオリンピック施設で最大使用量となる2,300m3を超えた木材は、すべて国産認証材を用いて国内資源の適正利用と林業の持続的な発展に貢献することを目指した。
(高橋 秀通、石原 政幸)
高橋 秀通(たかはし・ひでみち)
日建設計ダイレクター
1962年 北海道生まれ/1984年 東京大学工学部建築学科卒業後、日建設計入社/1994年 ペンシルバニア大学建築学科修士課程修了
石原 政幸(いしはら・まさゆき)
清水建設設計本部教育・文化施設設計部主席設計長
1964年 埼玉県生まれ/1987年 法政大学工学部建築学科卒業/1989年 同大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程修了後、清水建設入社
選考評:
 東京オリンピックの体操競技会場である。その外観は極めてシンプルでありながら、低く伸びやかなそのシルエットはたいへん美しい。前面の運河と緩やかなスロープの先に構成された基壇が、水平のプロポーションをさらに際立たせている。
 競技場の大空間を支えているのは集成材とスチールのロッドを組み合わせた張弦梁構造である。これは今回技術指導をされた斎藤公男先生が長年取り組んできた構造であるが、施工性とデザインへのきめ細かな配慮がなされている点に、地味ながらその進化を感じさせる。結果として現しの構造体が美しい内観を演出している。
 この建物のもうひとつの特徴は木材の多用である。もちろん環境配慮といった側面もあると思われるが、かつてこの地が貯木場であったという敷地の記憶に起因している。屋根の構造架構をはじめ外装の軒裏、屋内の観客席などに、それぞれの樹種の特性を生かした木材が採用されている。特に仮設の観客席については、オリンピック後には撤去して別の建物で再利用されることが決まっている。また建物自体は一部改修して展示場として利用する予定となっている。
 本施設はオリンピック施設として象徴的な建物であるとともに、低炭素社会に向けた木材の利用、使命を終えた後の用途を変えた再利用など、現在の建築が抱えるさまざまな課題に正面から取り組み、そしてその結果を美しい建物として結実させた秀逸な建築である。(永池 雅人)
永池 雅人(ながいけ・まさと)
一般社団法人東京都建築士事務所協会副会長、株式会社梓設計フェロー
1957年 長野県生まれ/1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、梓設計入社/現在、同社フェロー