日本海事検定協会本部ビル
竹中工務店
第46回東京建築賞|一般一類部門最優秀賞
10mワンスパンのPCaルーバーによる南側ファサード。
  • 10mワンスパンのPCaルーバーによる南側ファサード。
  • 外観夜景見上げ。
  • 2層吹き抜けた2階窓回り。
  • コンセプトと図面
建築主:
一般社団法人日本海事検定協会
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
施工:
竹中工務店
所在地:
東京都中央区
主要用途:
事務所
構造:
RC造(免震構造)
階数:
地上10階/塔屋1階
敷地面積:
296.85㎡
建築面積:
231.31㎡
延床面積:
2,056.20㎡
工事期間:
2016年9月〜2018年1月
撮影:
井上 登
設計趣旨:
環境と人に呼応するワンルームオフィス
大通りと裏通りに挟まれた間口10m、奥行き23mのコンパクトな本部ビルである。建築の内と外を繋ぎ、緩やかな領域を持った不均質な環境の中に、場所ごとに相応しいアクティビティを刻み込んだ。通りに開かれたシンプルな骨格の中に透明なコアを設けて南北をつなぎ、外部からの光と風を適度に緩和しながら取り込んでいる。取り込んだ外部環境は、内部のパンチングパネル天井から柔らかく染み出す光や風へと連なる。南面外装は、10mワンスパンを両端のみで支持したPCaルーバーであり、内部の人の行為に呼応して、時にカウンターに、机に、作業台に、最適な高さ・形状へと変容させながら日射遮蔽率が90%を超えるよう配置している。内外が連続する環境の中に人のアクティビティを丁寧に編み込むことで、外装は揺らぎ、街とワークプレイスとの新たな関係性を創出している。(花岡 郁哉)
花岡 郁哉(はなおか・いくや)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第2部門 設計4(アドバンストデザイン)グループ長
1975年 東京都生まれ/1999年 東京大学工学部建築学科卒業/2001年 同大学院修了後、竹中工務店入社
福西 英知(ふくにし・えいち)
竹中工務店 東京本店 設計部 設計第2部門 設計4(アドバンストデザイン)グループ 課長
1980年 大阪府生まれ/2003年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/2005年 同大学院修了後、竹中工務店入社
選考評:
 東京駅八重洲口から伸びる八重洲通りと、その裏通りに挟まれた間口10m、奥行き23m、高さ38mのコンパクトな直方体の建築である。周辺に同じような規模の建築が建ち並ぶまちなみの中に、うもれてしまうのではと思わせる事務所ビルであるが、南面の表通りに面して白色に統一されたファサードがその存在を際立たせている。
 ファサードを特徴づけているのは、建屋幅10mの全長に架け渡された奥行きの深いPCaPC造のルーバーである。このルーバーは日射を遮蔽しながら、階ごとに机、作業台、リフレッシュエリアのカウンターになど多様な用途に用いられ、執務空間に心地よい変化をもたらしている。
 平面形状は極めて単純で、執務室以外の諸室を裏通りに面する北側に集約し、EVシャフト裏側に設けられた通路に立つと、北側に広がるまちなみを望むことができる。そして広い表通りに面した南側には視線を遮るものがなく、狭隘さを感じさせない執務空間を生みだしている。
 構造は免震構造としているが、敷地一杯に建てられる免震構造であることと、地下階を既存躯体の内側に収める必要から、一階の柱を内側に傾斜させている。このため搭状比が6を超える悪条件ながらも、建物の重心を下げるなど、免震アイソレーターに引き抜き力を生じさせない工夫が施されている。
 その他、環境に対する配慮はいうまでもなく、快適な執務空間を生み出すためのさまざまな工夫は、事務所ビルを知り尽くした設計者の高い力量とその成果を十分感じさせ、最優秀賞を贈るものである。(金田 勝徳)
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、株式会社構造計画プラス・ワン会長
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン/2005〜10年 芝浦工業大学工学部特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部特任教授、工学博士