コート・ハウス
松岡聡田村裕希
第46回東京建築賞|戸建住宅部門優秀賞
南側の街路より見る。
  • 南側の街路より見る。
  • 中央の空間「コート」。
  • 配置・平面図
  • 断面パース(母屋の対角断面)
  • 断面パース(南北断面を西向きに見る)
建築主:
非公開
設計:
一級建築士事務所松岡聡田村裕希
施工:
有限会社安松託建
所在地:
埼玉県上尾市
主要用途:
戸建住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
166.58㎡
建築面積:
82.40㎡
延床面積:
101.72㎡
工事期間:
2017年9月〜2018年6月
撮影:
松岡 聡、田村 裕希
設計趣旨:
 分譲後40年を経たこの住宅地では高齢夫婦・単身高齢世帯と多世帯化の二極化が進んでいる。分譲当時の核家族のプランニングが合わなくなり、手入れを要する南の大きな庭が負担となっている。建て替えにあたって、狭い分譲地特有の機能化した小庭、犬走りへの要求の多さと、隣家への細かな配慮が、建て主から明確に示された。放射状に広がる9つの下屋とさまざまな深さをもつ軒は、施主がこれまでに発見してきた日差しと通風、プライバシーと地域のルールに細かく応えることができる対話の基盤となった。私たちが「コート」と呼ぶ中央の空間は、従来の南庭に代わるスペースとして自由な使い方と、多世帯化した新たな家族にとって、付かず離れずの距離感を保ってくれる。「コート」はこのニュータウンに残る2階部分の小さなシルエットを継承し、変化する分譲住宅地の景観と内実に応えるかたを模索した結果である。(松岡 聡、田村 裕希)
松岡 聡(まつおか・さとし)
近畿大学教授、松岡聡田村裕希
1973年 愛知県生まれ・1997年 京都大学卒業/2000年東京大学大学院修士修了後、設計事務所勤務を経て、2005年 松岡聡田村裕希を共同設立
田村 裕希(たむら・ゆうき)
東京工芸大学准教授、松岡聡田村裕希
1977年 東京都生まれ/2004年東京藝術大学大学院修士修了後、SANAA勤務を経て、2005年松岡聡田村裕希を共同設立
選考評:
 40年前に開発されたニュータウンの一画に建つ戸建て住宅の建て替えである。建売分譲を主とした一帯の住宅にある共通パターンを注意深く分析、理詰めに反応する一方、建主は設計者の両親であるため、多少の冒険が許された。中央の四角い"コート"に向けて、リビング、ダイニング、キッチン、水回り、階段に至る諸機能がプラグインする形で放射状に突き刺さっている。それらの機能はプラグ側からコート側に半分突き出す形でレイアウトされているため、コートが利用モードに沿って多様な機能に変容することが期待されている。こうした求心性の高いプランでは建物周辺に残る空間が残余となってしまうことが多いが、周辺環境のコンテクストを周到に読み込んで、坪庭やバルコニー周辺に活用するなど、敷地全体を効果的に使い切る努力も感じられた。この中央のコートは、多様な利用モードが折り重なることで、さらに豊かになる潜在力を秘めていると思われるものの、NLDK的住宅のプロトタイプに生じた疑問に、半ずらしのプラグイン型機能ダイアグラムという明確なアイデアで答えようとしていて、住宅のあり様を手探りする挑戦が高く評価された。(車戸 城二)
車戸 城二(くるまど・じょうじ)
建築家、(株)竹中工務店 常務執行役員
1956年生まれ/1979年 早稲田大学卒業/1981年 同大学院修了後、株式会社竹中工務店/1988年 カリフォルニア大学バークレー校建築学修士課程修了/1989年 コロンビア大学都市デザイン修士課程修了/2011年 株式会社竹中工務店設計部長/現在、同社常務執行役員