K2 house
A.A.E.
第46回東京建築賞|戸建住宅部門最優秀賞
北東側外観。
  • 北東側外観。
  • ダイニングより見る。
  • ハナレより見る。
  • 配置・平面図・ダイアグラム
  • 断面図
建築主:
下吹越 武人
設計:
有限会社エー・エー・イー一級建築士事務所
施工:
株式会社小林
所在地:
東京都
主要用途:
戸建住宅
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
113.55㎡
建築面積:
61.81㎡
延床面積:
100.79㎡
工事期間:
2017年8月〜2018年4月
撮影:
小川 重雄
設計趣旨:
 大規模な都市開発による街区と木造密集住宅地の境界上に敷地があり、周囲のさまざまな環境への接点として3つの〈ニワ〉を纏った住宅である。三角形という敷地形態と狭隘道路に囲まれた施工条件を考慮し、部材数を極力減らした立体的な木造架構を〈ニワ〉に与えて中央のボリュームを軽やかに持ちあげ、内外が交じり合うように繋がる一室空間とした。
 〈ニワ〉は、風や街の気配を内部へ導き、住宅地の隙間に連なる小さな空地と空に対して開放的な空間とした。この3つの〈ニワ〉が太陽の動きに合せて空間の斑をつくりだす。室内に陽だまりが点在し、時には〈ニワ〉が外部より明るかったりする。光の変容が暮らしに合わせた選択性を生み、内外の境界を曖昧にしながら場の奥行きと広がりを生成する。そして、暮らしが自然に周囲へと繋がり、街中で暮らすことの心地良さが醸成される。架構と構成によって空間の自立性と場の変容性という両義性を獲得した住宅である。(下吹越 武人)
下吹越 武人(しもひごし・たけと)
A.A.E.代表、法政大学教授
1965年 広島県生まれ/1988年 横浜国立大学工学部建築学科卒業/1990年 同大学院修士課程修了/1990年 北川原温建築都市研究所入所/1997年 A.A.E.設立
選考評:
 建築家の自邸である。大規模開発によって生れた開放的な街区に面した木造密集住宅地の一角にある3角形敷地に計画された。敢えて難しい敷地形状に挑戦することで、個性的で新鮮な住宅が生まれた。
 敷地の中央にリビング、寝室、水廻り、諸室をコンパクトにまとめた四角形の構築物を配置し、その3辺に3角形のバットレスの様な張り出しスペースをつくることで、ユニークな内部空間を創出している。ニワと呼ばれるこの三角形のスペースは、エントランスホールと階段・ダイニング・ハナレというテラス状の諸室となって、中央の四角形の諸室に接続している。
 2カ所のニワは高い吹き抜けとスカイライトによって明るく爽やかな居室となり、1カ所は外部空間が切れ込んでいて周囲の環境を内部に感じさせる。季節による風向を微細に計算して内部居室に取り込み、敷地の周囲に植込まれた緑を吹き抜けて清々しい空気を感じる。リビングは周囲から一段下げることによって生じる落ち着いた居心地よさ等、さまざまな手法を駆使して小規模な住宅の中に空間の多様性をつくり上げた。外装はすべて白銀の鋼板で覆い、周辺住宅地の中でアーティスティックな風貌を際立たせている。シンプルな構造システムから多様な内部空間を生み出し、自らが家族と共に楽しく暮せるスペースを創出することに、培った知験を駆使してつくり上げた意欲作である。(岡本 賢)
岡本 賢(おかもと・まさる)
建築家、一般社団法人日本建築美術協会会長
1939年東京都生まれ/1964年 名古屋工業大学建築学科卒業後、株式会社久米建築事務所(現・株式会社久米設計)/1999年 同代表取締役社長/2006年 社団法人東京都建築士事務所協会副会長/2014年 一般社団法人日本建築美術協会会長