はじまりの教会(妙智會群馬教会)
(株)竹中工務店東京一級建築士事務所
第40回建築作品コンクール 一般部門一類優秀賞
施工:
(株)竹中工務店
建築主:
妙智會教団
所在地:
群馬県太田市
主要用途:
教会
構造:
RC造 一部S造
撮影:
堀内 広治(新写真工房)、鳴海英男(近代航空株式会社)
設計趣旨:
人の心に寄り添い地域と共にある建築を創る
この作品のクライアントは地域に愛着を持ち、長い時間をかけて周囲と親和的な関係を築いてきました。
誠実さや感謝の心、助け合いの気持を共有する仲間と集まる等の日常的な想いの集積が、元始における教会の本質であり、それは誰にでもある大切な人間的営みであると感じました。
元始における教会─はじまりの教会─は、地域に開放的で親和性があり日常的に手の届くところにあるような教会でありたいと思いました。
開放性と親和性の表現として、背後の広沢丘陵に触発された垂直力と、地域とつながっていたいという想いが生み出す水平力が融合した、緩やかな曲線屋根の教会としました。その実現のために、ライズl.8m、ワイド24mの単層ラチスをミリ単位で精度管理しています。そして、大きなボリュームを感じさせない低い軒先、開放的な前庭、地域住民に聞かれた運営管理、環境負荷低減の為にダブルスキン化された屋根などによって、「人の心に寄り添い地域と共にある教会j を実現することが出来たと考えています。(橋本 博、宮本 聡子/竹中工務店東京一級建築士事務所)
審査評:
市街を一望する丘に建てられた仏教系宗教団体の教会である。その市街に向けて大きく開かれた開口と、地盤がならだかに起伏する周囲の環境になじむ緩やかな3次曲面を持った屋根が、この建築を特徴づけている。
この建築の中心をなす本殿は、24mスパンの比較的大きな無柱空間となっている。その大空間を250mm×250mmのH形鋼を2.5mグリッドの格子に組んだ単層ラチス構造が覆っている。ライズが極めて低く、スパンの約1/100の寸法のH型鋼を用いて3次曲面を構成し、さらにその上に載る屋根はコンクリート版と金属屋根とでダブルスキン構造として、構造的な挑戦と共に、地球環境への配慮もなされている。
こうした極めて薄く複雑な曲面を持つ屋根を、単層ラチス構造で実現するには、設計・施工・鉄骨製作者それぞれの役割に応じた細心の注意力と深い洞察力が要求される。これらはいずれも相当高いハードルであり、それを越えてこの建築を完成させて総合力は、さらに大規模建築への発展性を予感させる。
どこかに薄くシャープな屋根構造を感じさせる表現がみられると、より明るい印象が強まるように思われるのが、わずかに惜しまれる点である。しかしライズを抑えた低い曲面屋根と、外部に開かれた大きな開口部が周辺環境に良く馴染み、設計者が設計コンセプトとして掲げた「地域と共生する集会施設」がしっかりと実現されている秀作であることに間違いはない。
(金田 勝徳/建築構造プラス・ワン・代表取締役)