和光小学校・幼稚園
中村勉総合計画事務所
第40回建築作品コンクール 一般部門一類優秀賞
施工:
建築/白石建設株式会社
機械設備/新菱冷熱工業株式会社
電気設備/弘電社
建築主:
学校法人和光学園
所在地:
東京都世田谷区
主要用途:
小学校・幼稚園
構造:
SRC造・RC造・S造
竣工:
2011年3月
撮影:
堀内 広治(新写真工房)
中村 勉(なかむら・べん)
1946年東京都生まれ/1969年東京大学工学部建築学科卒業/1969〜77年槇総合計画事務所/1977〜88年AUR建築・都市・研究コンサルタント/1988年中村勉総合計画事務所設立
設計趣旨:
和光学園発祥の地、世田谷区経堂の小学校・幼稚園の再開発計画で、入り組んだ低学年教室と特別教室を整理し、中庭的な小さいグラウンドを半外部空間が囲む全体プランをつくった。グラウンドを囲む開放廊下は、動線機能だけでなく、さまざまな状況に応じて不特定な目的に利用される融通無碍な外的な内部空間とした。時には季節により、内的外部空間にも変化し、友達とのおしゃべりの場や、教育や生活指導の場ともなる。また、温熱環境の制御装置としても効果を発揮している。
和光小学校の体験教育と自然共生教育の理念にならって、子どもたちの実践の場となる「和光の杜」 をプール跡地につくった。新鮮な空気は杜から、130〜180mの地下ピット、ホットチューブを通って教室内に導入される。
敷地は狭く、住宅地にあったが、居ながら3期で基本計画・設計を含めて4年の工期で施工した。完成後は、当初からこの姿だったような、端正なグラウンドを囲む開放回廊の学校が生まれた。(中村 勉)
審査評:
和光学園発祥の地、世田谷区経堂の小学校・幼稚園の再整備計画であり、1990年に完成した北校舎を保存・改修して残し、他の入り組んだ校舎群を、一体感のある教育空間に再生する計画である。校舎を使用しながらの整備であり、3期に分けての整備計画が周到に練られた。
住宅地の中、決して十分な大きさではない敷地において、グラウンドを囲むように開放廊下を巡らすことで、内外が一体となった中庭型の配置を基本として、小学校と幼稚園の複合施設に相応しい人間的なスケールと統一感を生みだしている。また、体育館屋上にプールを設置することで、幼稚園東側に「和光の杜」と称する外部空間を設けるなど、使用しながら整備の制約の中で、様々な建築的工夫がなされている。住宅地内の道路「農大通り」に面しては、敷地南西角に円筒形のボリュームを配置することで、適切なスケールの変化と学校としての象徴性を生みだしている。
構造はRC造であるが、内部仕上げには、木の無塗装の板材や丸太を使用し、開放廊下も南洋材のルーバーによって、和光小学校の体験教育と自然共生教育という教育理念に答えている。開放廊下は深い庇出日射遮断を行いつつ、引き戸によって季節に応じて、開閉可能となっており、地下ピットで地中熱利用した暖気を床暖房および室内への適切な導入によって、使用電力を大きく削減することに成功している。
以上、この作品は、使用しながらの整備という困難な問題を克服し、教育空間としての在り方および環境配慮の両面において極めて質の高い建築として作り上げている。これらの点が高く評価され、一般一類の優秀賞にふさわしい作品と判断された。
(小林 克弘/首都大学東京・教授)