ザ・パークハウス六番町
(株)竹中工務店 東京 一級建築士事務所
第40回建築作品コンクール 共同住宅部門優秀賞
施工:
(株)竹中工務店
建築主:
三菱地所レジデンス(株)
所在地:
東京都千代田区
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造
撮影:
光齋昇馬
設計趣旨:
千代田区六番町の閑静な住宅地に建つ、46戸の定期借地住宅。敷地は武家屋敷の区画が残り、南西側は寺院と緑地に開かれた土地。この環境を取り込み、高い開放性と広がりを持たせるため、シームレス鋼管による約7mの跳ね出しと、扁平梁により2,500mmのサッシュ高さを実現し、特徴あるスラブが積層する外観を実現した。
各住戸は、中庭、光庭を配置することで、3面4面が外気に接する、外壁率の高い形状とすることで、戸建のような通風、採光にすぐれた住戸を提供している。また、住人のアプローチ動線は、目線の先に必ず「光」、「緑」を配置し、印象的なシーンが展開する空間構成とした。
外装手摺は鍛加工したロートアルミ16mm・10mm角をランダムに並べ、工業製品にはない繊細な素材の陰影の表情により、現代の縦格子を表現した。また、手工業的な素材をエントランスホールから玄関サインまで展開し、シンプルで上質な表現とした。(梅野 圭介/竹中工務店東京一級建築士事務所)
審査評:
この作品は、東京都心の四谷駅にほど近い六番町に位置する46戸の50年定期借地権付き分譲共同住宅である。周辺にはビジネス街や高級住宅街があり、町名の由来となった江戸の武家屋敷の町割り街区が今も残る一区画、緑豊かで閑静な住宅地にある。南側道路に面して南北に長方形の敷地の中程に建物を配置し、もとから土地にあった道路脇の桜を残しながらまわりを樹木や草花で囲うことから計画が始まっている。
設計者は、ゆとりのある良質な居住環境をテーマとして、建物の所々に入江状の中庭を設け、奥行のあるバルコニーなどの手法で最大限に敷地内外の緑や光といった自然を取り込むことで成立させている。共同住宅といえば均質で無表情になりがちな形態をもつものが多いが、ここでは六層の2mも張り出したスレンダーなバルコニーの出を持つ外観は、水平が強調され古来からの五重塔のような伸びやかな豊かさ、安定感のある表情があり、また特にランダムに並べられた縦格子のロートアルミ手すりが一層建物全体の印象を際立たせ、固有で美しい表情を与えている。住戸プランでは、どの住戸も開放感のある空間を得るために階高や天井高さ、柱間を最大化し、広いバルコニーと三面開口を確保しながら、たっぷりとした採光と通風を取り入れるなど自然豊かな居住性能が読み取れる。人の気配を感じさせない佇まいではあるが、周囲のまちなみ景観を十分に取り込み調和のとれた作品として秀作である。
(福島 賢哉/(株)賢プランズ設計事務所・代表取締役)