
講演する西澤明洋さん。(撮影:筆者)
ブランディングデザインと建築
協会の賀詞交歓会に先立って開催された特別講演は、株式会社エイトブランディングデザイン代表の西澤明洋さんを講師にお迎えしました。テーマは「ブランディングデザインと建築」です。「ブランディングデザイン」……正直言って耳慣れない言葉です。西澤さんはデザイン業界で先んじてこれを専門に活動されてきました。
私のような60代も半ば過ぎでおしゃれ感覚も財力もないオッサンは、「ブランド」と聞くとグッチやシャネルなどの「ブランド品」を思い浮かべてしまい、正直言って縁のない世界だと考えてしまいます。しかし、西澤さんの講演はそんなオッサンの考え方を刷新するに充分な内容でした。
経営という視点
西澤さんは京都工芸繊維大学・同大学院で建築を専攻されていらっしゃいましたが、同校にデザイン経営を体系的に学べるデザイン経営工学科が立ち上がったのを機に、デザイン経営も学ばれるようになったとのことです。われわれ建築士と根っこの部分で共通点をお持ちで、なおかつ、われわれがつい置き去りにしがちな経営という視点をお持ちです。
つまり、建築は竣工したらそれで終わりではなく、それがどのように周知され、認識され、活用されるべきなのか、そのために何をしたらよいのか、その観点を持つことは良い建築をつくり上げることと同じくらい大切なことなのだ、と勉強させられる講演でした。
共創──クライアントと共に「本当にやりたい経営」を探る
「ブランド」と聞くとデザイナーが思い浮かびますが、西澤さんのスタンスは「共創」。クライアントと共に「本当にやりたい経営」とはどのようなものなのかを共同作業で探ってゆき、そのためはどうしたらいいのか、何が必要なのかを提案し、共につくり上げて行く。その中にはもちろん建築も含まれますし、その過程において、クライアントが本当に欲している建築とはどのようなものなのかを知り、その要望に応えて行く手がかりも見えてくるのだと思います。
ブランディングデザイン──ふたつのフレームワーク
西澤さんはブランディングデザインの考え方としてふたつのフレームワークを挙げられます。ひとつは「フォーカスRPCD」®。ブランディングデザインの進め方です。
Pはプラン、Cはコンセプト、Dはデザイン、Rはリサーチです。
プランを立て、コンセプトを決めてデザインし、その結果をリサーチする、そして問題点を掘り起こしてプランに戻る、これを繰り返して行くことでブランド構築を行うとのこと。
P→C→Dの流れは建築家なら誰しもやることだとは思いますが、R:リサーチが加わることで「共創」の流れになって行きます。
クライアント側の問題意識や要求もここで熟成されて行くのではないか、本当にクライアントが求めている建築をつくるにはそこが重要になってくるのではないか、そして他との差別化を図れるようになるのではないか、そう感じました。
ブランディングデザインの3階層
もうひとつは「ブランディングデザインの3階層」®。ピラミッド型の三角形の図で、上から順にM、C、Cと並びます。企業の中でのブランディングの構造を表しています。ピラミッドの底辺を形づくるひとつ目のCはコミュニケーション。ブランドのコミュニケーションのすべてです。
中間層を形づくるふたつ目のCはコンテンツ。その企業のサービスや商品など事業の中核になります。
そしてピラミッドの頂点を形づくるMはマネジメント、経営戦略です。
このピラミッドに縦串を通すことによって「共創」となります。それぞれがバラバラではダメなのです。
ブランディングで日本を元気にする
最後に「ブランディングとは約束と生きざま」だとまとめられ、有言実行の大切さを話されました。不言実行ではなく有言実行です。コミュニケーションこそ「共創」の鍵なのです。そして「ブランディングで日本を元気にする」という言葉で講演を締めくくられました。この数十年間低迷期が続く日本ですが、技術力の高さや勤勉な国民性など、世界に誇れる資質は充分あります。それをブランディングによって世界にアピールする、それがこの低迷期を抜け出す鍵となるのではないでしょうか。
日本丸の舵を手にしている政治家の皆さんにもこの講演を聞いていただきたかった、そんな思いを抱きました。

鷹取 奨(たかとり・すすむ)
東京都建築士事務所協会南部支部、鷹取1級建築士事務所
1958生まれ/芝浦工業大学建築学科卒
1958生まれ/芝浦工業大学建築学科卒
カテゴリー:東京都建築士事務所協会関連








