当会は、(一社)東京構造設計事務所協会、(一社)東京都設備設計事務所協会および(一社)日本建築積算事務所協会関東支部の3団体、ならびに東京都建築士事務所政経研究会と共同して、令和6(2024)年10月31日に国に対し要望書を提出すると共に、同年8月30日に東京都に対し要望書を提出したところ、次のとおり回答をいただきましたのでご報告いたします。
令和7年度国家予算、税制改正等に関する要望の回答について
自由民主党東京都支部連合会会長|井上 信治 政調会長|平 将明
要望1:
設計等を委託する建築主の利益保護を図る建築士法(以下「法」という)の趣旨を全うするため、建築設計を管理する責任を持つ管理建築士に対し、建築士の定期講習の際に管理建築士として必要とされる内容を付加した講習を実施頂きますよう要望いたします。併せて、かかる講習を受講した管理建築士の下で業務を行えば建築士事務所全体としては十分な業務水準を確保することができることから、建築士の定期講習の受講間隔を3年から5年に延長頂きますよう要望致します。
回答:
・建築士法第22条の2に基づく定期講習は、国民の生命、財産の保護の観点から、建築士の資格取得後の新たな建築技術への対応や建築基準法令等の改正への対応等必要な能力の維持向上を図るものです。・この講習は、建築士事務所に所属する全ての建築士を対象としており、管理建築士もその対象となります。
・なお、ご要望の管理建築士に限った講習を新設し、代わりに建築士の定期講習の受講間隔を3年から5年とすることについては、あくまで建築物の設計は個々の建築士の責任のもとで行われることを踏まえると、対応は困難と考えております。
要望2:
売主・買主が安心して中古住宅を取引することができる市場環境の整備並びに既存住宅流通市場の活性化に向け、既存住宅を売却する際に、売主に対し、既存住宅状況調査の実施を義務付ける施策を講じて頂きますよう要望いたします。
回答:
・既存住宅流通市場では、さまざまな住宅の取引がなされており、購入後すぐに取り壊す予定の古家や築浅の物件など、インスペクションの必要性が低い建物にまでインスペクションを一律に義務付けることは、過剰な費用負担を強いることになるため、慎重な検討が必要です。・一方、国土交通省では、インスペクションの活用の促進を図るため昨年4月1日、標準媒介契約約款の見直しを行い、媒介契約書に、あっせん「無」とする場合における理由の記載欄を設けるとともに、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の見直しを行い、売主等から告知書の提出を求めることにより、買主等への情報提供の充実を図ることの重要性を明確化しました。
・また、インスペクションを促進するため、売主等に対する一定の実施費用の補助を実施している自治体もあるものと承知しております。引き続きインスペクションの普及・促進に努めてまいります。
要望3:
現在、建築設計業界では建築設備設計者不足が大変深刻な状況で、これがネックとなり設計業務を受託することが困難な事態が多発しています。また、建築設備設計者は省エネ導入や再エネ促進、感染症対策等において重要な役割を果たしていますが、これらの対応も不十分となることが危惧されています。このため、建築設備設計者が不足している実態の検証並びにその対応策を検討するための検討会を設置頂きますよう要望いたします。
回答:
・人口減少、少子高齢化の影響により、建築設計業界においても、建築士をはじめとする建築設計を担う人材の安定確保が課題となっております。・とりわけ、建築設備設計については、省エネ対応の高度化、老朽化した設備の改修需要の増加等により、足下でも、人材不足が顕在化しつつある状況と認識しております。
・人材確保に向けては、平成30(2018)年に、建築士法改正により、建築士試験の受験資格を改め、受験機会の拡大等の措置を講じたところです。
・引き続き、関係団体等と連携し、実態把握や方策の検討に努めてまいりたいと考えております。
要望4:
既存建築物の改修設計において、業務の標準的な発注仕様書の策定をご検討頂きたく要望いたします。その上で、現地調査、基本計画・基本設計及び実施設計等の各設計業務の料率算定基準を設定して頂くよう要望いたします。
回答:
・発注内容等は個々の契約に基づいて決まるものであり、改修設計に限らず、国として標準的な発注仕様書を定めることは困難と考えています。・ご指摘の改修設計業務に係る業務報酬基準については、昨年1月に改正されました設計・工事監理に係る業務報酬基準(※)が検討された中央建築士審査会及び基準検討委員会において検討課題とされていますが、標準的な業務の設定が難しいなど多くの課題が示されているところです。
(※)「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(令和6年国土交通省告示第8号)」
令和7年度東京都予算に対する要望について
東京都議会自由民主党幹事長|小松 大祐 政調会長|松田 康将
要望1:
売主・買主が安心して中古住宅を取引することができる市場環境の整備並びに既存住宅流通市場の活性化に向け、既存住宅の売主に対し既存住宅状況調査の費用を直接補填するための補助金制度を創設すると共に、国に対し、既存住宅を売却する際に売主に既存住宅状況調査の実施を義務付けるよう働きかけることを要望いたします。
回答:
消費者が既存住宅を安心して選択できるようにする上で、住宅が新築時から中古流通時までの全体を通じてその品質及び性能が確保され、その価値が適切に評価されるような市場の形成が必要です。都は、これまでも消費者向けに既存住宅の売買にあたって参考となるポイントをまとめた「東京既存住宅ガイドブック」や「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック(戸建住宅編)」などにより建物状況調査等の利用促進に向けた普及啓発を行ってきました。
これらに加え、昨年度からは、民間事業者等が行う建物状況調査や既存住宅売買瑕疵保険、住宅履歴情報の三つの仕組みに関する普及啓発の取組を支援する事業を実施するとともに、買取再販事業者等が建物状況調査や省エネ改修の効果を消費者に明らかにして、適正な評価の下で販売する取組を支援する事業も合わせて実施しており、当該事業では建物状況調査の費用も補助対象としています。
また、国に対しては、既存住宅の価値が適切に評価される市場の形成に向けて必要な施策を総合的に推進するよう要望しています。
令和7年度予算額 46,329千円
(住宅政策本部)
要望2:
安全・安心な「セーフシティ」を構築するため、災害発生時に地域の避難所となる東京都所管の施設について、専門家集団である当会に定期検査・報告業務を委託して頂きますよう要望いたします。
回答:
建築基準法第12条の規定に基づく定期検査・報告業務は、競争入札方式で委託先を選定しており、検査後の報告で不良箇所等の指摘があった箇所を把握し、適宜、修繕等の対応を行っています。
(教育庁)
要望3:
既存住宅の省エネ・再エネを促進するために、建築士を対象とした省エネ・再エネに関する講習会の開催並びに同講習会受講者を対象とした(仮称)省エネ・再エネ資格者制度を創設して頂きますよう要望いたします。
回答:
都は、令和6年度より、「戸建住宅省エネ・再エネアドバイザー事業」を開始し、アドバイザー業務を担う建築士の方々に、現地での省エネアドバイスを可能とするため、省エネ・再エネリフォームの内容や都の補助制度などについて講習を実施したところです。引き続き、本講習を実施することにより、既存住宅の省エネ化・再エネ化を促進してまいります。令和7年度予算額
戸建住宅省エネ・再エネアドバイザー事業 68,208千円
(住宅政策本部)
要望4:
既存建築物の改修設計において、改修設計業務の標準的な発注仕様書の策定を検討すること。その上で、現地調査、基本計画・基本設計及び実施設計等の各設計業務の料率算定基準を早期に設定して頂くよう要望いたします。
回答:
改修設計業務の委託に当たっては、施設ごとに工事内容を定め仕様書等に反映し発注しています。設計に際しては、改修範囲など現場の実態を反映しなければならないため、現況調査は設計業務を行う上で必要な作業であり、委託仕様書に調査の実施を明記しています。
また、石綿含有分析調査など特別に現況調査が必要なものについては、仕様書に明示し適切な費用を加算しています。
なお、基本設計及び実施設計については東京都の委託料算出に係る基準に基づき適切な費用を算出し、設計以前に行う基本計画等については案件ごとに必要な業務を定め適切な費用を算出しています。
引き続き、仕様書等に業務内容を明記し、適切な費用の算出に努めていきます。
(財務局)
要望5:
建築設備設計技術者の確保のために、都立職業能力開発センターのカリキュラムに建築設備設計を習得できるカリキュラムを設置して頂きますよう要望いたします。
回答:
都では、都立職業能力開発センター・校において、求職者向け訓練で建築に関する基礎的な知識、製図・CAD等を学ぶ科目を実施するなど、建築分野の基盤技能を支える人材を育成しています。引き続き、こうした取組みを着実に実施してまいります。また、在職者訓練においては建築設備設計の基礎となる、二級建築士の資格取得にかかる講習を行っており、引き続き建築分野の人材育成に努めてまいります。
令和7年度予算額
【能力開発訓練】 769,132千円/【能力向上訓練】 473,402千円
(産業労働局)
カテゴリー:東京都建築士事務所協会関連
タグ:予算要望








