東京消防庁からのお知らせ
第26期火災予防審議会(人命安全対策部会)の答申概要について──これからの時代にふさわしい防災センターのあり方や自衛消防体制
山橋 大輔(東京消防庁予防部副参事)
火災予防審議会の位置付け
火災予防審議会とは、東京都知事が、火災の予防上の課題などに対し、学識経験者や関係行政機関の意見を得るために設置した都知事の諮問機関です。審議の結果は火災予防条例の改正などその後の火災予防対策に活かされます。火災予防審議会には人命安全対策部会と地震対策部会のふたつの部会が設置され、東京消防庁がその事務局を担っています。火災予防審議会は東京都の火災予防条例にその設置根拠を持ちます。昭和47(1972)年3月に設置され、同年11月に第1期火災予防審議会が開催されました。令和7(2025)年3月10日には第26期火災予防審議会総会が開催され、第26期火災予防審議会諮問に対する答申が東京都知事に対してなされました。
第26期火災予防審議会(人命安全対策部会)の諮問概要
第26期火災予防審議会の諮問は、「安全・安心で持続可能な東京の実現に向けた、長期にわたり使用され、又は使用形態が多様化する防火対象物に対する防火安全対策」でした。本諮問の背景には大きく2点の理由があります。1点目は東京都内の建物数の増加です。東京都内で消防設備の設置が義務付けられる建物は増加の一途を辿っており、東京消防庁が把握しているだけでも45万棟を超えています。2点目は生産年齢人口の減少による人手不足です。東京都政策企画局の推計によると、東京都の生産年齢人口は2025年の918万人をピークに、2060年には665万人まで減少するとされています。
人が管理しなければならない建物数は増加するにも関わらず働き手が減少するため、現行消防法の人に依存した管理では安全性の担保ができなくなることは明らかです。
しかし、こうした消防法上の問題を1期2年という限られた時間で審議することは困難であるため、第26期火災予防審議会(人命安全対策部会)では、3点のテーマに絞った検討を行うこととしました。1点目は「これからの時代にふさわしい防災センターのあり方や自衛消防体制」、2点目は「無人や少人数で管理・運営する施設の防火管理のあり方」、3点目は「新しい使用形態を有する施設等の防火安全対策」です。

図❶

図❷
「これからの時代にふさわしい防災センターのあり方や自衛消防体制」に係る審議および答申概要
本稿では上記2の諮問中、1点目の「これからの時代にふさわしい防災センターのあり方や自衛消防体制」に係る審議内容および答申概要について紹介します。・防災センターとは
ここでいう防災センターとは、建物内で発生する火災などの災害の監視と消防設備の制御を行う建物の管理施設で、東京都では一定規模以上の建物でその設置が義務付けられています。
・審議の背景
東京都内の建物に勤務する防災センター要員は、新規募集をしても応募者が少なく人材を確保できない状態です。東京都の生産年齢人口は今後減少することが見込まれており、この状態が解消される見込みはありません。こうした状況の中、東京都の火災予防条例では防災センター要員を防災センターに24時間常駐するよう求めているため、(一社)不動産協会などの業界団体から常駐義務の合理化などを要望されていました。
・審議および答申の概要
審議の中で2点の問題が焦点になりました。1点目は防災センター要員の活動をデジタル技術で代替えできるのかというもの、2点目は防災センターの監視を遠隔でできるのかというものです。このため、最新のデジタル技術(図❶)の調査を行うとともに、調査したデジタル技術を活用して自衛消防活動の検証を行いました。また、防災センターの遠隔監視を制度化している福岡市消防局の先行事例を調査するとともに、遠隔監視の類型を6類型(図❷)に分類し、実際の建物の防災センターを使用して遠隔監視が機能するかどうか検証を行いました。
(1)防災センター要員の活動をデジタル技術で代替えすることについて
課題の1点目である防災センター要員の活動をデジタル技術で代替えできるのかについて検討した結果、防災センター要員の活動をデジタル技術で代替えすることは可能であることが分かりました。ウェアラブルカメラやセキュリティシステムなどの活用により、安全性を損なわずに防災センター要員の活動時間の短縮を図ることができました。
しかし、新たな課題も判明しました。1点目は現在市場に流通するデジタル技術とは設計思想の異なる新技術を導入したい場合、仕様的な基準を定めてしまうと新技術の導入に支障を生じてしまうということ、2点目は防災センター要員が人事異動などにより変わることから、防災センター要員の活動がしっかりと行われているかを定期的に再検証しなければ当初の安全性を担保できないということです。このため、こうした新たな課題に対して、制度的に対応を取らなければならないとされました。
こうした審議内容を踏まえ、本件に係る答申は「デジタル技術の導入により防災センター要員の対応行動の合理化を推進すべき」こと、「デジタル技術の妥当性は第三者機関の防災センター評価で判断すべき」こと、「自衛消防活動の検証を定期的に実施し、専門家の助言を受けるべき」ことの3点とされました。
(2)防災センターの監視を遠隔で行うことについて
課題の2点目である防災センターの監視を遠隔でできるのかについて検討した結果、適切な体制が整備されれば遠隔監視の実現が可能であることが分かりました。近隣の待機場所などに応援要員を配置して火災が発生した建物に駆け付けることで、スプリンクラー設備が設置されている建物の限界時間(発生した火災がフラッシュオーバーするまでに要する時間を言います。)である9分以内に119番通報、初期消火、避難誘導などの消防活動を完了することができました。
しかし、新たな課題も判明しました。1点目は防災センター要員が近隣の待機場所などから駆け付ける前に消防隊が到着してしまう場合があること、2点目は防災センター要員が近隣の待機場所などから駆け付けたのちに火災現場を確認するため、現行の体制に比べ119番通報が遅延してしまうということです。このため、こうした新たな課題に対して、制度的に対応を取らなければならないとされました。
こうした審議内容を踏まえ、本件に係る答申は「遠隔監視の基準を整備し、防災センター要員の配置の最適化を図るべき」こと、「防災センター要員到着前に消防隊が遅滞なく活動開始できる対策を講じるべき」こと、「早期に119番通報する対策を講じるべき」ことの3点とされました。
答申を受けた今後の動き
本答申の具現化に対する大手ディベロッパーをはじめとした業界団体の関心は高く、既に30件を超える既存物件で本制度を採用したいとの相談がきています。また、大規模な既存共同住宅の防災センターにおいても、本制度を使えないかなどの要望も頂いています。東京消防庁では、こうした要望を踏まえつつ本答申を具現化するため、令和8年度前半までに防災センターの技術上の基準の見直しを行い、令和8年度中には第三者機関による防災センター評価を実施できるよう鋭意作業を進めていきます。

山橋 大輔(やまはし・だいすけ)
東京消防庁予防部副参事
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