女神の森セントラルガーデン
竹中工務店、永山祐子建築設計
第44回東京建築賞一般二類部門優秀賞
建築主:
株式会社AOB慧央グループ
設計:
株式会社竹中工務店東京一級建築士事務所
  :
一級建築士事務所有限会社永山祐子建築設計
施工:
株式会社竹中工務店
所在地:
山梨県北杜市
主要用途:
集会場
構造:
S造、一部RC造
階数:
地下1階、地上2階
敷地面積:
9,588.85m2
建築面積:
2,787.36m2
延床面積:
5,385.13m2
工事期間:
2015年5月〜2016年9月月
撮影:
表 恒匡
設計趣旨:
風土の魅力を感じられる、体験としての建築
 八ヶ岳南麓に佇む森の中の集会場の計画。地域を活性化する講演や演奏会、および社員集会・研修を行う場として森と一体となる大小多様な空間を内包する。空間の分節により生まれる森へ抜ける視線、景色の変化を感じさせる経路の構成により自然との共存を図り、風景の断片と「肌理」細やかな素材の表情をシークエンスの中に織り込んだ。ランドスケープは地域植生の葉、花、実など季節毎に現れる植物の色を拾い上げ、カラーパレットのように同色の植物ごとに群植し、自然の魅力が凝縮された景色をつくり込んだ。また、風土に呼応する環境建築として、卓越風や地熱、伐採木の利用、極寒地に適応した外装材など四季の変化に応じた自然との関わりをデザインに展開した。これら自然の営みを感じられる小さなきっかけを積み重ねることで、地域内外から訪れた人びとが建築空間を通して豊かな風土を体験できる建築を創出した。(大石 卓人、永山 祐子)
大石 卓人(おおいし・たくと)
1981年 静岡県生まれ/2006年 法政大学大学院建設工学修士課程修了後、竹中工務店入社/現在、竹中工務店 東京本店 設計部 設計第1部門 設計1グループ 主任
永山 祐子(ながやま・ゆうこ)
1975年 東京都生まれ/1998年 昭和女子大学生活美学科卒業/1998〜2002年 青木淳建築計画事務所勤務/2002年 永山祐子建築設計設立
選考評:
 八ヶ岳の麓、森の中に静かに佇む集会場の計画である。敷地に足を踏み入れると、屋根付きの屋外ロビーがホールへと導いてくれる。ふと横を見ると、中庭を囲むように配置されたホール、カフェ、多目的ホールといった配置の構図が見えてくる。まさに設計者が心を傾けた空間ではなかろうか。
 外装には森への思いがそこかしこに見て取れる。アスロックにペイントされた樹木の枝張りのようなパターン、開口部に取り付けられたやはり樹木を模したアルキャストによるルーバー。森に溶け込む建築を目指したとのことだが、残念ながらそのボリューム感まではカバーできなかったようだ。
 内部に入るとシンプルで禁欲的な空間が迎えてくれる。催し物の際には観客が主役になれる空間である。ホールという本来閉鎖的な機能に対し、周辺環境を最大限活かし、森に向けて開いた大きなガラス面は心地よい空間を演出している。しかしながら熱負荷に配慮して採用したLow‐Eガラスが、森へのクリアな視界をやや妨げている感があるのが残念である。それにもまして、今回現地審査が木々が葉を落とした冬であったことが、この建物にとっては最も残念であったかもしれない。(永池 雅人)
永池 雅人(ながいけ・まさと)
東京都建築士事務所協会副会長
1957年 長野県生まれ/1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業後、梓設計入社、現在常務執行役員/品川支部