星のや東京
三菱地所設計、東環境・建築研究所、NTTファシリティーズ
第44回東京建築賞一般二類部門最優秀賞
建築主:
三菱地所株式会社(再開発施行者)
設計:
株式会社三菱地所設計一級建築士事務所
:
一級建築士事務所有限会社東環境・建築研究所
:
株式会社NTTファシリティーズ一級建築士事務所
施工:
戸田建設株式会社
所在地:
東京都千代田区
主要用途:
ホテル
構造:
RC造、一部SRC造
階数:
地下3階、地上18階、塔屋1階
敷地面積:
1,334.64m2
建築面積:
742.49m2
延床面積:
13,958.29m2
工事期間:
2014年4月〜2016年4月
撮影:
Nacasa & Partners Inc.
設計趣旨:
東京に日本旅館をつくる、それが「星のや東京」のテーマだ。超高層ビルが林立するオフィス街大手町の日常に対する非日常の建築として、江戸小紋柄のスクリーンで覆い「ビル」としてのファサードを消し、「重箱」のような柔らかみを目指した。スクリーンにより、客室と周囲のオフィスとが直接見合わない関係をつくり、対して低層部では、内部の造作と外装のモジュールを合わせることで、ガラスを通して丸の内の象徴でもある仲通りに旅館内装の非日常が表出し、新しい風景をつくり出している。
エントランスは、高い天井と、栗と竹の家具と畳が日本旅館の導入部としての玄関をつくり出し、ゲストはEVから廊下、客室まで畳の上を歩いて行く。靴を脱ぐという日本ならではの行為が畳で象徴され、内部空間の日本的な感覚を表現した。各階にお茶の間ラウンジを設け、小さな旅館としてのサービスを行い、この「小さな旅館」の集積として「星のや東京」を構成している。(清水 聡、東 利恵)
清水 聡(しみず・さとし)
1964年 群馬県生まれ/1991年 横浜国立大学大学院修士課程修了後、三菱地所入社/2001年〜 三菱地所設計/現在、同社建築設計二部ユニットリーダー
1964年 群馬県生まれ/1991年 横浜国立大学大学院修士課程修了後、三菱地所入社/2001年〜 三菱地所設計/現在、同社建築設計二部ユニットリーダー
東 利恵(あずま・りえ)
1959年 大阪府生まれ/1982年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/1984年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了/1986年 コーネル大学建築学科大学院修了/東 環境・建築研究所代表取締役/日本女子大学、日本大学非常勤講師
1959年 大阪府生まれ/1982年 日本女子大学家政学部住居学科卒業/1984年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了/1986年 コーネル大学建築学科大学院修了/東 環境・建築研究所代表取締役/日本女子大学、日本大学非常勤講師
選考評:
東京の都心において、高層ビルに構える旅館としての、新しいかたちを生み出すことを目指した作品である。高層ビルでありながら、まず玄関で靴を脱ぎ、全館を裸足で楽しんでもらおうとの姿勢。高層ビルの各フロアの孤立性を逆手に取り、各階をひとつの小さな旅館としてまとめた構成。奇をてらった演出にも見えかねないこれらのコンセプトを、地に足ついた心地よい内部空間にまとめ上げている点が見事である。
たとえば、玄関では膨大な数の下駄箱を巧みにデザインして、無理なくファサードの一部に昇華しているし、ホテルで気になる廊下に立ち並ぶPSの扉も、ここでは美しい明かり障子へと組み替えられている。さらには、外国映画の中の日本建築にでも出てきそうな「畳敷きの廊下」といったボキャブラリーが、経験に裏打ちされた手腕で建築化されている。表面上の繊細さの裏に、建築家が手掛けた内装空間ならではの、骨太な思想といったものの存在すら感じられ、泊まってみたいという思いを掻き立てられる空間に仕上がっている。
一方で、外観、特に周辺建物とのあり方には、少々疑問を感じた。素っ気なさは狙いなのであろうが、内部に見られた巧みさが欠けているようにも感じられた。(山梨 知彦)
山梨 知彦(やまなし・ともひこ)
建築家、株式会社日建設計常務執行役員 設計部門副統括
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計
建築家、株式会社日建設計常務執行役員 設計部門副統括
1960年 神奈川県生まれ/東京藝術大学美術学部建築学科卒業/東京大学大学院都市工学専攻修了/1986年 日建設計