KDXレジデンス赤坂(Akasaka Brick Residence)
KINO architects
第42回東京建築賞共同住宅部門最優秀賞
建築主:
株式会社アトリウム
設計:
株式会社木下昌大建築設計事務所一級建築士事務所
施工:
北野建設株式会社
所在地:
東京都港区
主要用途:
共同住宅、飲食店
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上10階
敷地面積:
314.87m2
建築面積:
200.48m2
延床面積:
1,507.86m2
工事期間:
2013年12月〜2014年12月
撮影:
阿野 太一
設計趣旨:
 オフィスやマンションが建ち並ぶ都心の集合住宅。高密度な住環境においては、周辺から適度に距離を保つための工夫が必要となる。既存の集合住宅の多くでは、水平に連続するオープンなバルコニーに面した開口部に対し、カーテンなどの有無によって内外との関係は切り替えられるが、ここではそれに加え、煉瓦ブロック透かし積みのスクリーンによるセミオープンな開口を用い、内外の関係に幅をもたせている。セミオープンなスクリーンを設けると、バルコニーは延床面積にカウントされてしまい、事業計画が大きく揺らいでしまうが、スクリーンに面したバルコニーの床を抜くことで、その部分の面積カウントを回避した。また、避難方法は、従来のマンションにあるように、バルコニーの避難経路を1層ごとに降りていく方法ではなく、抜いた床を通過して2層ごとに降りる方法としている。
 住戸プランは、不動産のルールに従い各階で同じものとしているが、煉瓦スクリーンを千鳥配置とすることで、奇数階と偶数階でスクリーンの位置が交互に入れ替わり、住環境のパターンを多様なものとしている。住戸の多様性を確保し、街の風景を刷新する、集合住宅の新しいプロトタイプを目指した。
(木下 昌大、石黒 大輔)
木下昌大(きのした・まさひろ)
1978年 滋賀県生まれ/2003年 京都工芸繊維大学大学院修士課程修了/2003年 C+A/2005年 小泉アトリエ/2007年 KINO architects設立/2014年 京都工芸繊維大学助教
石黒 大輔(いしぐろ・だいすけ)
1984年 広島県生まれ/2010年 京都工芸繊維大学大学院修士課程修了/2010年 KINO architects
第42回東京建築賞選考評:
 オフィスやマンションが建ち並ぶ都心に立地する、小規模な中層集合住宅プロジェクトである。この建物を特徴付けている千鳥パターンの煉瓦ブロックの透かし積みスクリーンは、2面道路に沿ってL字型に計画されており、歩行者レベルからの見上げの視線を適度に遮り、高密度の住環境で起こりがちな見合いもあまり気にならない、心地よい住空間を生み出すことに成功している。このセミオープンな開口は、通風や換気を確保するために、通常よりも横長のプロポーションの煉瓦を製作することで開口率を調整しており、閉じすぎず、開きすぎない質感を伴った半透明スクリーンとなっている。
 特筆すべきは、煉瓦スクリーン部分に面した屋外バルコニーの床を抜くことで、床面積を発生させずに避難経路を確保し、単なるファサードデザインとしてだけでなく、限界まで床面積を要求される都心の不動産の事業計画を満足させながらも、新しい街の風景を生み出した点にある。
 また、重量のあるスクリーンに対して懸念される層間変位に対応する納まりや、熱環境に対するシミュレーション等の技術的テーマにも挑戦した、設計者の努力と意欲的な姿勢も高く評価したい。
選考委員|宮崎 浩
宮崎 浩(みやざき・ひろし)
建築家、株式会社プランツアソシエイツ 代表取締役
1975年 早稲田大学理工学部建築学科卒業/1977年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了/1979〜89年 株式会社槇総合計画事務所/1989年 株式会社プランツ建築デザイン設立(1991年株式会社プランツアソシエイツに改称)/1990〜2010年 早稲田大学非常勤講師/2011〜13年 同大学大学院客員教授