洗足学園音楽大学 Silver mountain & Red cliff
k/o design studio + KAJIMA DESIGN
東京建築賞・第41回建築作品コンクール 一般二類部門|最優秀賞
建築主:
学校法人洗足学園
設計:
k/o design studio + KAJIMA DESIGN
施工:
鹿島建設株式会社 横浜支店
所在地:
神奈川県川崎市
主要用途:
学校
構造:
鉄筋コンクリート造
階数:
地上5階、地下1階、塔屋1階
竣工:
2013年 8月
撮影:
ナカサアンドパートナーズ、齋藤 さだむ
設計趣旨:
開校90周年を迎える洗足学園のキャンパス再編は、広いジャンルの音楽教育の場として整備を重ねるうちに群島のように散在してきた校舎を統合する計画である。ここではキャンパスのゲートに面して内外の接点と位置づけ、音楽教育のコアであるリハーサルスタジオの教室棟と情報発信の拠点となる事務棟の2棟を配置し、両棟間を学内の主要動線とし、その回りにも周遊する動線を設けてキャンパスが活性化するよう意図した。
教室棟は限られた敷地の中で圧迫感を和らげ強いメッセージを発するシルバー色の湾曲形状とし、事務棟はそれとドラマチックな対比をなすようカラフルな矩形にデザインした。教室棟の3次元曲面はCADを駆使したステンレスの一文字葺きで、天空を映して時々刻々と表情を変え、一方の事務棟は3段階の赤色モザイクタイルをパッチワーク状に貼ることで視覚的な刺激をもたらし、学生の音楽を学ぶモチベーションが高まるよう期待した。
押野見 邦英(おしのみ・くにひで)
1941年 東京都生まれ/1965年 横浜国立大学工学部建築学科卒業後、同大学助手/1966〜2001年 鹿島建設建築設計本部/2001年〜 k/o design studio主宰
上岡 修(うえおか・おさむ)
1962年 東京都生まれ/1986年 明治大学工学部建築学科卒業/1988年 同大学大学院修士課程修了後、鹿島建設/現在、同社建築設計本部グループリーダー
原嶋 宏樹(はらしま・ひろき)
1983年 東京都生まれ/2006年 芝浦工業大学工学部建築学科卒業後、鹿島建設/現在、同社建築設計本部所属
東京建築賞・第41回建築作品コンクール選考評:
創立90年の歴史を持つ学園の中では比較的新しい、音楽大学のあり方を象徴する施設を目指して建設されたリハーサル室と事務棟である。
敷地の前面道路に面したこのふたつの施設の間には連絡通路が設けられ、学園全体の新しいメインゲートとしても位置づけられている。
Silver mountainと名づけられたリハーサル室は音楽大学の教室であり、市民が学生の練習風景を鑑賞できる場として開放もされているという。3次元曲面で構成された特徴的な形状と、全体をステンレス一文字葺で均質に仕上げられて銀色に輝く外観は、周辺環境とは異なる際立った印象を与えている。
一方Red cliffは対照的に直線的な壁に囲まれた壁式RC造として、その名の通り絶壁のように学園内のエントランス道路脇に屹立している。各階共、長手方向横一線に開けられた細長い連窓以外に開口部の少ない直方体の壁は、赤色系3色のタイルで覆われ、Silver mountainと対となって新しい街の景観を創出している。
これらふたつの施設は、一見学園内の既存建築とも、近隣の街並みとも違った異質な肌触りを持っているように見える。それだけにこの計画を実現する上で、学園と設計者、設計者と施工者との並々ならぬ連携や相互理解があったことは想像に難くない。その成果としてでき上がった連絡通路を含めたこれら一群の建築が、違和感なく街と学園との結節点のように感じられるまで昇華させた関係者のチームワークと総合力は、最優秀賞にふさわしいものと評価された。
(金田 勝徳)
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、構造計画プラス・ワン 代表、工学博士、構造設計一級建築士、JSCA建築構造士
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners取締役/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン 代表取締役/2005〜10年 芝浦工業大学工学部建築学科 特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部建築学科 特任教授