中央区立中央小学校・中央幼稚園
(株)久米設計
第40回建築作品コンクール 一般部門二類優秀賞
施工:
戸田・伊藤組・白岩建設共同企業体
建築主:
中央区
所在地:
東京都中央区
主要用途:
小学校・幼稚園
構造:
RC造 一部S造
設計趣旨:
関東大震災後の復興小学校として85年前に建てられた校舎の改築プロジェクトです。竣工当時の図面と現地調査を基にした昇降口・階段の保存・復元とともに、自然採光と自然換気の工夫に満ちた復興小学校の設計理念を踏襲し、中高層建築が密集する都心の狭小な敷地に、子供たちが植物を身近に感じ、自然の風や光、素材に包まれ、多様な出会いがある学習・交流の場を創造することを目指しました。
周辺地域のかつての植生を再現し、コンパクトに積層させた校舎を緑で包み込み、その郷土植物の四季折々の姿を型どったレリーフが、アートワークとして各学年の多目的スペースの壁面を構成するっくりとしています。
全教室を二面採光・二面採風で、心地よい風が感じられる建築計画とし、木の香りがする校舎と、植物、アートワークが一体となり、都心で、学ぶ子供たちにとって生きた教材となる小学校・幼稚園をつくりたいと考えました。
(小牧 実豊、藤森 慶弘/久米設計)
審査評:
この学校は、関東大震災後の復興小学校として85年前に建設された小学校が建て替えられたものである。敷地は当時のままであり、他の都心に建つ学校と同様、周囲は自動車が行きかう道路に囲まれ、中高層建築が密集した狭小敷地である。学校用地としては決して恵まれた環境とはいえないその場所に、各種教室はもとより、体育館、プール、グランドなど、小学校に必要な施設のすべてを揃えた上に保育園を併設しているため、建蔽率が80%に及んでいる。ここではこうした悪条件が、設計上のいろいろな工夫を引き出す役割を果たしているかのように見える。
まず屋外での活動が制限されていることから、屋内で上履きのまま生徒が活発に活動できるような工夫がされている。例えば校舎外周の周回できるバルコニー、植物を栽培し観察するためのテラス、校舎のほぼ中央部に設けられた緩やかな階段、廊下など、それぞれが広くユッタリとした空間構成となっていて、生徒の活発化な行動を促すことに成功している。
 また屋外に面した随所に植栽された植物や、道路を挟んで隣接する緑豊かな震災復興公園に沿って広いエントランス階段を設けることで、校庭の緑の少なさを補っている。さらに震災復興小学校当時の昇降口は階段の一部が修復され、新校舎にそのまま組み込まれていることにも好感が持てる。
以上のような様々な工夫が丁寧に活かされた設計は、その力量を十分感じさせるものである。
(金田 勝徳/建築構造プラス・ワン・代表取締役)