清光社 埼玉支店
設計|アリイイリエアーキテクツ
第47回東京建築賞|一般一類部門最優秀賞
倉庫よりエントランスを見る。
  • 倉庫よりエントランスを見る。
  • トップライトを見上げる。
  • 2階オフィス。
  • 北側外観夕景。
  • 配置・1階平面図
  • 2階平面図
  • 断面詳細図
建築主:
株式会社清光社 代表取締役社長 豊吉 康夫
設計:
アリイイリエアーキテクツ一級建築士事務所
施工:
シグマ建設株式会社 代表取締役社長 小野猛
所在地:
埼玉県上尾市
主要用途:
事務所
構造:
木造
階数:
地上2階
敷地面積:
651.83㎡
建築面積:
353.43㎡
延床面積:
483.32㎡
工事期間:
2019年7月〜2019年12月
撮影:
中村 絵
設計趣旨:
 埼玉県上尾市、国道と住宅街に挟まれた敷地に建つ、機械部品を扱う専門商社の倉庫兼オフィスの計画である。
 木造で倉庫をつくるにあたり、経済性に配慮しつつフォークリフトが動き回る気積を確保するため、いかに住宅レベルの木材で大空間を構成できるかが構造的な主題となった。機能の切り替わる中央に柱列を設け、またその柱から方杖を、空間の中心に大きく現れることをいとわず取り付けることで、登り梁を流通製材に分割できる。方杖によって形づくられた菱形空間には、近接する住宅街の視線や壁面を必要とする倉庫への配慮から、棟の全長に渡るトップライトを開けた。そこに光を天井面に反射しながら透過するテントを吊ることで、倉庫・オフィスともに隔てなく、時間や天候によって移ろう柔らかな光に満たされる空間となった。
 粗野ながら人と物が心地よく共存しあえるこの空間が、倉庫という非装飾的用途の建築において、新たな環境の提案となると考えた。
(有井 淳生、入江 可子)
有井 淳生(ありい・あつお、写真左、© Masami Naruo)
アリイイリエアーキテクツ
1984年 神奈川県生まれ/2007年 東京大学工学部建築学科卒業/2008 – 09年 OMA(ロッテルダム)/2010年 東京大学大学院新領域創成科学研究科修了/2010 – 15年 シーラカンスアンドアソシエイツ/2015年 アリイイリエアーキテクツ設立/2016 – 19年 東京理科大学理工学部助教
入江 可子(いりえ・かこ、写真右、© Masami Naruo)
アリイイリエアーキテクツ
1984年 東京都生まれ/2010年 東京藝術大学美術学部建築学科卒業/2011 – 12年 Politecnico di Torino, Facoltà di Architettura/2013年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程建築専攻修了/2013 – 17年 シーラカンスアンドアソシエイツ/2017年よりアリイイリエアーキテクツ共同代表
選考評:
 約12.7m×21.6mの長方形の平面形状で、最高高さ12.3m、軒高6.9mの切妻屋根の延長線上に、4.5mの比較的跳ね出し寸法の大きな庇を擁した木造建築である。内部空間の構成は、長手方向の片側半分は2層となっていて、1階部分に作業場、2階部分に事務所を配置して、反対側半分は吹き抜けの作業場が配置されている。
 こうした木造にとって決して小さくない空間全体の骨組みを、最大断面寸法120mm×180mmの一般流通材で構成している。そして流通材では間に合いそうもない、スパン約6.4mの2階事務所の床梁には、ためらいなくH形鋼を用いて、骨組みの単純化とコストダウンを図っている。また切妻状の屋根架構には、見付け長さ6.4mの登り梁のサイズダウンのために、中央部の柱から登り梁に向けて、両方向に斜め方杖を設けている。
 この登り梁と方杖で形成される菱形骨組みの連続が、屋根頂部に設けられたトップライトから膜材を通して柔らかく差し込む陽光に照らし出されて、爽やかで快適な内部空間を生み出している。こうして菱形骨組みを活かしながら、間仕切壁を最小限に抑えた明るく見通しの良い空間は、設計意図であった「社内の自然な一体感と調和をもたらす」ことを見事に実現している。(金田 勝徳)
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、株式会社構造計画プラス・ワン会長
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン/2005〜10年 芝浦工業大学工学部特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部特任教授、工学博士