はつせ三田
設計|ihrmk
第47回東京建築賞|共同住宅部門最優秀賞
北側外観夕景。
  • 北側外観夕景。
  • 北側足元周り外観。1,350mmグリッドの構造フレーム。
  • 中央の吹き抜け階段室「めぐり土間」。
  • 4階(GL+9,450)共用テラス。
  • インナーテラスのある住戸。
  • 断面図
  • 平面図(GL±1,350mm毎)
建築主:
株式会社愛宕長谷川
設計:
株式会社ihrmk一級建築士事務所
施工:
株式会社辰
所在地:
東京都港区三田
主要用途:
共同住宅
構造:
RC造
階数:
地上7階、地下1階
敷地面積:
213.05㎡
建築面積:
143.07㎡
延床面積:
852.27㎡
工事期間:
2018年6月〜2019年12月
撮影:
稲継 泰介
設計趣旨:
 敷地は、東京都心の国道沿いの大型マンションと、密集する低層木造住宅のちょうど中間に位置する。コントラストのある周辺環境の粒度や肌理を調停するスケールとして、1,350mm間隔で配した310mm角の柱梁によるフレームを設定した。このシンプルな構造にすべて異なるプランの13戸の住居が絡み合って点在する。
 中央に余白・余地としての「めぐり土間」(吹き抜けの階段室)、その周囲に「オープンテラス」、「インナーテラス」といった小さな共用空間がつながり、内外が混交しながら連続する空間構成により、網を重ねた中に空気を含んだ建築となっている。
 変化に応じて建物内を移り住んでいける時間的柔軟さと、専用部/共有部間を閉じるでも開くでもなく破線状のエッジとすることで、身体に対する適度な距離感を合わせ持っている。
 オーナー一家各々の「個室」と、ファミリー、ひとり暮らし、SOHO等のさまざまな借主が集まって住む「大きな家」である。
(井原 正揮、井原 佳代)
井原 正揮(いはら・まさき)
ihrmk
1980年 福岡県生まれ/2002年 名古屋大学工学部社会環境工学科卒業/2006年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程中退/2007 – 14年 シーラカンスアンドアソシエイツ/2015年 ihrmk開設/2020年~ 駒沢女子大学非常勤講師
井原 佳代(いはら・かよ)
ihrmk
1979年 東京都生まれ/2002年 神奈川大学工学部建築学科卒業/2004年 キングストン大学大学院美術デザイン建築学部修了/2009 – 16年 シーラカンスアンドアソシエイツ(プレス)/2016年~ ihrmk/2017年~ 神奈川大学大学非常勤講師
選考評:
 応募作品の外観を特徴づけている外壁面は、サイズ310mm×310mmの小さな柱・梁によって縦横1.35mグリッドが構成され、そのグリッド中に、ほぼ市松状に耐震壁が組み込まれたベアリングウォールとなっている。このベアリンングウォールを外周面に配したチューブ構造は、建築の高い安全性を担保すると同時に、そこに住む人の眺望と周辺住民との視線をほどよく調整する機能を持っている。
 角地である敷地の特性から、高度地区とふたつの道路からの斜線制限によって、平面形状が各階ごとに異なわざるを得ない。この難問をかいくぐるようにして、丁寧かつ綿密に計画された各戸ごとに違った平面計画は、そこに住んでみたいと感じさせる魅力に溢れている。
 平面上の中央近くには、設計者が「めぐりの土間」と呼ぶ空間が設えられ、階段とその周囲の居室、インナーテラス、オープンテラスが入り混じって配置されている。これ等が一体となった「土間」は、住民が三々五々、好きな場所で過ごせる空間であることを意図しているという。
 こうした設計者の創意と熱意が込められた住まいは、住み手の住まい方によってどのようにでも変化するように感じられる。設計者はその変化と成長を見守るかのようにして、ここの1階に自らの仕事場を設けている。(金田 勝徳)
金田 勝徳(かねだ・かつのり)
構造家、株式会社構造計画プラス・ワン会長
1968年 日本大学理工学部建築学科卒業/1968〜86年 石本建築事務所/1986〜88年TIS&Partners/1988年〜現在 構造計画プラス・ワン/2005〜10年 芝浦工業大学工学部特任教授/2010〜14年 日本大学理工学部特任教授、工学博士