一橋大学空手道場
(株)木下昌大建築設計事務所
第40回建築作品コンクール 一般部門一類奨励賞
施工:
大出産業(株)
建築主:
国立大学(法)一橋大学
所在地:
東京都国立市
主要用途:
空手道場
構造:
S造 一部木造
設計趣旨:
緑豊かな一橋大学構内に建つ空手道場。本計画で求められたことは、隣接する住宅街に練習時の声が響かない設計と、環境負荷の少ないシステム。これらの条件を最適化する建築をめざした。
練習時の騒音を抑えるためには、大きな開口を開けることができない。
夏季でも窓を開け放つことなく、同時にエアコンには頼らずに、快適な室内環境をっくりだすために導き出した答えが、北面のハイサイドライトと南面のガラリである。切妻屋根を分割し、少しずつずらしながら北側妻面に4 つの窓をつくった。そのハイサイドライトであれば一日中やわらかな光を取り入れつつ、熱取得を最小限にできる。
一方、エントランス上部にある南側妻面に設けたガラリからは風を取り込み、床下へ流し込んだ後、道場の床面から吹き出させている。床下から吹き出された空気は、道場内の熱気とともに、そのほかの南側妻面ガラリから排気され、室内は風通しの良い木陰のような環境に近づく。(木下 昌大)
審査評:
国立の一橋大学キャンパスのグランドの片隅の緑濃い景観の中にこの建築は位置している。大学空手部のOBの寄付によって建てられたというこの建築は空手道場と付属更衣室のみという極めてシンプルな構成で、通常なら単純な体育会クラブ室となるところを設計者は様々なアイデアを盛り込んで魅力的な建築に仕立て上げた。
キャンパスのはずれにあり隣接する住宅地に近い為遮音が必要であり開放的に作ることはできない。又空手道場としては充分な換気が必要となり且つ機械設備による多大な負荷に頼ることは望ましくない。その為に切妻屋根を4等分に分割し少しずつずらす事によって出来る北面に大きな採光窓をとり南面に通風ガラリを設けた。北面からのハイサイドライトは一日中柔らかな光を道場内に溢れさせ、南面のガラリから取り込んだ風を床下のピットに送り込み冷風として道場床から吹出して屋根面のガラリから放出させるという手法によって効率的なパッシーブソーラーを実現させている。分割された切妻屋根は鉄骨架構の上に木造和小屋を乗せる形で構成し道場内に変化する屋根形状とハイサイドライトの組み合わせでさわやかな空間を実現している。又リズミカルな屋根形状は外壁の素材と一体となってこの建築を強く印象づけている。若い設計者が意欲的に取り組んだ清新な印象を与える作品である。
(岡本 賢/(一社)日本建築美術工芸協会・会長)