働き方改革を考える 第11回
社会から必要とされ続ける会社を目指して──株式会社三悦設計を訪問
佐藤 孝子(東京都建築士事務所協会理事、働き方改革ワーキンググループ委員)
老壮青年世代ミーティング風景。(提供:三悦設計)
東京都産材を使った図書館。(提供:三悦設計)
協会HPの求人広告。
 四谷三丁目にある株式会社三悦(みよし)設計の代表、川手謙介さんに話をうかがった。
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 社の原点である「施主・施工者・設計者の三方よしの悦び」を社是とし、昭和43(1968)年の創立以来の先人の意思を継承しつつ、建物の設計及び監理、不動産開発のコンサルタント、調査鑑定、施設の維持管理にまちづくりなど、幅広い分野を建築設計事務所として総勢5名で歩み続けています。
小規模事務所の働き方改革の実現に向けて
 創立50周年を迎えた折、建築士事務所業界コンソーシアム人材支援事業を知り、よい機会と思い事業に参加しました。建築業務の多様化、複雑化、さらなる細分化傾向にあり、高度な専門性が要求されます。建物の設計・監理だけではなく設計以外の業務もこなせるスキルが必要とされ、小規模事務所は、仕事量とのバランスを考えると、すべてに対応できる人材を雇う耐力に欠けます。この欠点を解消するため外部とネットワークづくりを推進し、今年度の事務所協会事業スパイラルアップ事業にも積極的に参画しています。
新しい働き方への取り組み(テレワーク、シニア・壮年世代の人材活用)
 支援事業では雇用環境をめぐる時代の変遷や受け入れる側の心構えを学び、社の旧習を排し、時代に合った取り組みで人材を育成しなければと実感、雇用環境整備に着手しました。
 設計の仕事の一部は、必要に応じて出社できる環境が整備されれば、毎日オフィスに出社することなく、どこでも仕事はできます。自社に合ったやり方でテレワークの導入を決断し、フレキシブルな働き方のできる環境整備に取り組みました。早い時期に整備できたことで、予期せぬコロナ禍において影響なく業務ができています。
 意欲があり時間的にも余裕のある、まだまだ社会と関わって仕事がしたいシニア層の人材活用に着目しました。シニア層が培った技術は、次世代を担う若い人たちへの技術的助言や教育に有効的な活用が期待できます。支援事業はシニア層の社会復帰創出の機会になるでしょう。
 新型コロナウィルス感染症拡大の影響で多くの方がテレワークなどを経験し、自分の生活や働き方を見直す機会になったと思います。
 これからは、シニア世代だけでなく壮年世代の働き方の選択肢もあり得ると考えました。個々のライフスタイルに合せた働き方で週3日程度の勤務を考え、募集にあたって、人材会社よりも、協会のHPの求人広告が効果的だと思い募集広告を掲載しました。
青年部会の仲間とネットワークづくり
 一方、一例ですが、小規模事務所ならではのニッチな仕事として、地場産の材を使って図書館を新築できました。自社だけでは全仕事をこなすには限度があります。外部の信頼できる組織とネットワークを構築し、チームとして共に仕事をこなしています。また協会の青年部会の交流が、フラットな関係でネットワークづくりに多いに役立ち、青年部卒業後も共に仕事をしています。
恩師の言葉
 学生時代、研究室の恩師の言葉「常識を疑いなさい」をいつも忘れずに心に刻み、固定観念に捕らわれず、働き方についても環境整備の構築に取り組んでいます。
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 川手さんは、建築が好きで自ら仕事を楽しまないと伝わらないと言い、50年100年先を視野に次世代を担う者たちに、建築の面白さを伝えながら社会から必要とされ続ける会社にしていきたい、と結ばれた。
 ネットワークの構築やテレワークの実施で仕事の遂行はできるものの、協会HPでの人材募集に手応えがなかったことは人材掘り起こしのPRに課題を残した。小規模事務所では、人材育成教育や、種々の局面で支援できる協会のマネジメント支援センターの充実が望まれると痛感した。
(訪問委員:横村隆子|足立支部、 佐藤孝子|杉並支部)
佐藤 孝子(さとう・たかこ)
東京都建築士事務所協会理事、有限会社インターフェース
1949年青森県生まれ/1971年 東洋大学工学部建築学科卒業/1991年一級建築士事務所(有)インターフェース設立/現在、同代表取締役/杉並支部