福島復興再生視察
新宿支部|令和元(2019)年10月5日(土)@福島県原発事故被災地
小田 圭吾(東京都建築士事務所協会新宿支部、BMS株式会社一級建築士事務所)
大会会場前。
廃炉資料館の福島第一原発模型。(撮影:筆者)
 建築士事務所全国大会の翌日土曜日に、新宿支部は有志参加でエクスカーションBコースの「福島復興再生視察」に参加した。当日は朝8時に福島駅を出発して、主に車窓から浪江町、双葉町、大熊町の現状を視察し、富岡町にある「東京電力廃炉資料館」で原発の現状についての説明を受けた。コースとしてはこの後、楢葉町の天神岬にて昼食を取り、サッカーを中心としたスポーツ施設Jヴィレッジを見て明るい復興の姿を視察して終了となった。
 車窓からの視察であったが、除染の状況や汚染土壌の中間貯蔵状態と現在の空間放射線量などの説明を、同行していただいた福島会の方から受けた。特に驚いたのは南相馬での7月現在の空間放射線量がすでに0.07ベクレルに下がっていて、ベルリンや北京と同等な水準となっていることだった。因みに農作物被害による輸入制限を設けている韓国のソウルは0.12ベクレルということである。しかしながら中間貯蔵された土壌の処分にはまだまだ時間がかかるそうで、この問題は国家として全力で取り組む必要があると思った。
 最後に廃炉資料館で聞いた原発事故のプロセスについて感じたことは、水素爆発や原子炉の溶融は冷却水のポンプ電源の喪失が最大の原因であり、非常用電源を二重、三重に用意していなかったことが原因と思われること。原発の建設計画の不備ではないかということであった。建築物においてすら消防用施設の非常用電源があるわけで、まして原子炉の溶融防止の事故対策(地震・津波・台風)であればバックアップがあって然るべきであろう。最近東京電力の経営者責任を問う裁判の無罪判決が出たが、民間企業の責任を問う前に、経産省がバックアップを含んだ原発建設の基準をつくるときに対応すべきだったと思う。
 終わりになるが福島復興再生にエールを送り続けたいと思う。
小田 圭吾(おだ・けいご)
東京都建築士事務所協会新宿支部、BMS株式会社一級建築士事務所
1951年生まれ/1975年横浜国立大学工学部建築学科意匠河合研究室、1976年都市計画入沢研究室卒業/現在、BMS株式会社一級建築士事務所 役員/新宿支部