第18回建築ふれあいフェア 各支部ポストカード 人気ベスト5
杉並区立角川庭園・幻戯山房(すぎなみ詩歌館)
写真:塩谷 博史(造園家、NPOすぎなみ学びの楽園副代表)
文:村田 くるみ(東京都建築士事務所協会杉並支部副支部長、支部編集員、冬木建築工房)

 
 「カドカワ」という名前から何を思い起こされるだろうか。「読んでから観るか、観てから読むか。」という一九七〇年代後半の角川映画ブームを創出した角川春樹。その父で一九四五年に角川書店を創業し角川文庫を創刊した角川源義。この父子の旧邸が杉並区に残り、現在では区有施設として句会や茶会、学習会等に活用されている。
 角川源義は一九一七年に富山県の米穀商の家に生まれた。國學院大學で折口信夫に学び国文学研究者として頭角を顕すも、終戦直後に強い志を持ち出版人として歩み出す。三〇代から晩年にかけては、俳人としても多くの秀句を残した。
 旧角川邸の設計者は、源義と俳句を通じて交流のあった加倉井昭夫。施工は水澤工務店である。雁行配置、立面の水平性、大量の引き込み建具など近代数寄屋づくりの好例といわれ、加倉井が私淑した吉田五十八の影響が見られる。庭には俳句に相応しく野趣溢れる樹木、草花が、四季折々に花をつける。
 角川庭園では開館一〇周年を記念し、杉並区民からの公募による「杉並の俳句」句集の発行を企画している。一方、周辺には大田黒公園(音楽家、大田黒元雄の旧邸)や荻外荘(近衞文麿旧邸)など昭和前半期の文化遺構が多い。そこで、行政と区民が協働して、回遊性のあるまち歩きコースの提案など、「面的な活用」を模索中だ。まさに「みんなでつくる歩きたくなる街」(第一九回建築ふれあいフェアの開催テーマ)を目指している。

名称 杉並区立角川庭園・幻戯山房(すぎなみ詩歌館)
所在地 杉並区荻窪
建築時期 昭和三〇(一九五五)年
     平成二一(二〇〇九)年 国の登録有形文化財に登録
撮影者 塩谷 博史
塩谷 博史(しおたに・ひろし)
造園家、NPOすぎなみ学びの楽園副代表
村田 くるみ(むらた・くるみ)
東京都建築士事務所協会杉並支部副支部長、支部編集員、冬木建築工房
大分県生まれ/お茶の水女子大学文教育学部卒業/家族の駐在に伴い、アメリカ、オーストラリア等で専業主婦の後、子育てを終えてから建築士に"