平成30 年度東京都予算要望を提出
 一般社団法人東京都建築士事務所協会は、例年実施している次年度東京都予算等への要望について、昨年同様、会員の皆様から要望事項を募り、総務・財務委員会、理事会で慎重に審議した結果、下記4項目を要望事項とし、東京都知事、東京都議会自由民主党、都議会公明党、都民ファーストの会東京都議団へ提出しました。
要望を説明する大内達史東京都建築士事務所協会会長と首脳陣。
東京都議会自由民主党へ大内会長より要望書提出。
都議会公明党へ大内会長より要望書提出。
都民ファーストの会東京都議団へ大内会長より要望書提出。
要望1:既存建築物や空き家(ストック)の円滑な有効活用を図るため、既存ストック活用に関する条例等の見直しのための委員会の設置を要望します。
 また、その委員会等に実務者の代表として、本会会員を参画させていただきますよう要望します。
 都内で約82万戸に及ぶ空き家及び高齢単身者の住む空き家予備軍の速やかな活用及び時代のニーズに合わなくなった既存ストックを活用し、省エネルギー・省資源を図った街づくりは、これからの重要課題のひとつです。
 スクラップ・アンド・ビルド方式(既存建物を解体し、新築する)より、建物を堅牢につくり修繕しながらできるだけ永く使い続け、使い方が変わればその時代のニーズに合わせて改修していく方式の方が、資源やエネルギーの節減になり、より地球環境にやさしいこれからの街づくりスタイルです。
 今後のこのような方向を推進するために、既存建築物に係る増築・用途変更・大規模な模様替え等の改修工事において既存遡及される条例の見直しを行い、その活用計画に対する消防法関連、福祉関連等の諸条例、諸規定の現行基準の適用の緩和と建築ストック活用に特化した条例の整備が急務であり、見直しのための委員会の設置を要望します。
また、その見直し等を検討する委員会等には実務者が必須であり、実務者の代表として、是非本会会員を参画させていただきますよう要望します。
〈事例〉
 既存建築物の一部を用途変更する場合、その用途変更で既存建築物全体が16項のイの複合防火対象物とみなされ、用途変更工事をする部分だけでなく、それ以外の工事を要しない現在使用している部分についても、適用されます。
例:スプリンクラー設備の既存遡及、令8区画の構造要件など
要望2:東京都教育庁所管の施設について、建築基準法第12条第2項に基づく「特定建築物定期調査」及び同条第4項に基づく「建築設備定期検査」の一括業務委託を要望いたします。
 建築基準法第12条の規定に基づく都有施設の調査・検査業務は、現在一般競争入札方式で選定されています。競争入札方式による業者選定では、同じ物件のであっても、その業務を行う担当技術者が毎年異なることになります。そのため、その担当企業の力量により調査・検査業務の品質にばらつきが生じ、また、知識・知見を持たない不適切な技術者が選定される場合もあります。
 一般競争入札で調査・検査業務を行うものを選定した場合は、必要な業務量に見合わない低価格で落札され「建築物の敷地及び構造、並びに建築設備の損傷、腐食その他の劣化の状況を把握する」ための充分な調査・検査が行われない恐れがあります。
 以上の弊害を取り除くため、民間施設の場合は、同一技術者による同一物件を定期的、継続的に調査・検査業務を行わせ、同一な視点で調査・検査を行い、経年劣化部分だけでなく、不適切な使用・運用がされているところを予防的に発見し、それらに対して適切な処置や是正・改善に役立つ情報を施設管理者に提供しています。担当技術者がその物件の掛かりつけの主治医「ハウス・ドクター」のような存在になっています。こうした観点から、公共施設においても、事業者へ仕事の公平に分配するという意味あいを配慮し、その公平性が担保できるよう、一般社団法人等の専門家集団に随意契約にて一括業務委託し、その法人にその業務の管理をさせるべきです。都有施設についても、当該調査・検査業務の技術者選定を随意契約方式で本会に一括業務委託発注し、協会がその物件にふさわしい会員事務所を選定し、物件毎に適切な業務量に応じた業務費で業務を実施することにより、質の水準の高い調査・検査業務が確保され、それらのデー夕を集積・分析・管理することにより各施設の維持管理に役立つ情報を提供できると考えます。
 これにより東京都の発注管理事務業務の大幅な軽減を図ることができるものと考えます。以上の観点より、都有施設の内、災害時には地域の避難所ともなる教育庁所管の学校等の建築物の調査・検査業務について、本会に一括委託をするよう要望いたします。
要望3:建築物の設計・工事監理業務の発注・契約に際しては、業務報酬基準(平成21年国土交通省告示第15号)に基づき行われるよう要望いたします。
 また、設計者の選定に際しては、品確法等の主旨に則り、入札方式によらない、プロポーザル方式等の価格以外の要素を考慮した選定方法を要望いたします。
 また、やむを得ず入札方式を採用する場合には、「最低制限価格の設定」による設計品質の低下防止策の実施を要望いたします。
 業務報酬基準は、建築士法第25条の規定に基づき、建築主と建築士事務所が設計・工事監理等の契約を行う際の業務報酬の算定方法や基準等を国土交通大臣が告示で示したものです。建築物の安全性の確保と質の向上を図るために必要な合理的かつ適正な業務報酬と考えられます。
 現在、平成21年国土交通省告示第15号で業務報酬基準が定められ、平成26年6月27日に公布された「建築士法の一部を改正する法律(平成26年法律第92号)」の第22条の3の4で、設計受託契約又は工事監理受託契約を締結しようとする者は、「国土交通大臣の定める報酬の基準に準拠した契約を締結するよう努めなければならない」とされました。
 つきましては、大臣告示の業務報酬基準の意義を十分理解され、その実効性を高めるためにも、東京都における全ての設計・工事監理業務の発注・契約に際しては、これを尊重し、遵守されますよう要望いたします。
 平成17年に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の基本方針では、「公共工事に関する調査・設計の契約にあたっては、競争参加者の技術的能力を審査することにより、その品質を確保する必要がある」とされています。
 また、平成19年には、国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を推進する「環境配慮契約法」が施行され、国、独立行政法人の発注する建築物の設計についても、原則的に「環境配慮型プロポーザル」とすると規定されています。
 価格のみによる設計者選定は、設計等の業務の品質低下を招き、ひいては建築物の品質の低下につながる恐れがあり、品確法や環境配慮契約法の主旨にも反することになります。このことをご理解いただき、最低制限価格の導入に踏み切っていただきましたことには深く感謝申し上げますとともに、更なる導入の各発注部局への拡大と徹底をお願いいたします。
 また、公共建築物の設計・工事監理業務の発注に際しては品確法の主旨に則り、価格以外の要素を考慮した設計者の選定方式の採用を各部局に拡大をされますよう特段のご配慮をお願いいたします。
 公共建築物の設計・工事監理業務の品質確保にあたっては、設計者の技術的能力を適切に評価することが極めて重要であり、その適切な評価基準等として、建築関係諸団体が共同で参画・運営するCPD制度の活用や、建築士法により、消費者等からの苦情解決業務に真摯に取り組むことが法定団体として義務付けられている本会の会員が望ましいと考えます。
 従いまして、公共建築物の設計・工事監理業務の設計者選定に際しては、プロポーザル方式や総合評価方式等における評価基準として、「建築CPD情報提供制度」の引き続きの活用と本会会員であることへの特段のご配慮をお願い申し上げます。
 やむを得ず品質の低下を招く恐れのある価格競争による入札方式を採用しなければなない場合においても、適正な業務の遂行を確保するための最低限の方策として、公共建築物の品質確保の観点から、業務報酬基準の主旨を充分尊重した「最低制限価格の設定」を実施されるようお願いいたします。
要望4:今後の建築図書の電子化を進めるために東京都における建築確認申請手続きの電子申請化体制の構築と推進を要望いたします。また、電子申請の現状の把握と課題の抽出のためのワーキングの設置、より活用しやすくするための手続きの簡素化等の施策等を検討するワーキングに本会へ委員の推薦を賜りますよう要望いたします。
 近年、情報処理・通信技術の著しい発展によって様々な分野で業務の進め方に大きな変化が生じています。建築設計業務においてもCADを利用することが日常になり、さらに高度化したBIMの実用化も始まり、建築図書について電子的に作成されることが一般的となってきています。
 今後の図書の電子化はi-Constractionに見られるように施工やさらには建物の維持管理業務に活用され、設計図書の長期にわたる補完と活用により永く良い建築物ストックを生み出し促進するツールとなると想定できます。
こうした流れの中で、建築確認検査の手続きも、紙の書類の提出でなく、電子データの送信等で申請が可能ですが、いくつかの課題があり浸透していないのが現状です。
 一例として、セキュリティの問題、ハード面におけるスペックの問題等、更には、設備投資の問題など受入側、提出側双方に課題等が残されております。
 そうした課題を解決し、より活用しやすくすするための手続きの簡素化など検討すべくワーキング等を設置していただき、提出側の代表として、ぜひ本会へ委員の推薦を賜りますよう要望いたします。
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