報告:東京都建築士事務所協会 第88回定時総会
平成27年6月1日(月) 京王プラザホテル
中田 千恵子、田口 吉則、栗田 幸一(東京都建築士事務所協会編集専門委員会)
平成27年6月1日(月)、京王プラザホテルにおいて、第88回定時総会が開催された。
第1部として定時総会を行い、会場を変えて、第41回建築作品コンクール表彰式と、衆議院議員、萩生田光一氏による講演会を開催。最後は懇親会で締めくくった。
総会会場風景。
第1部 第88回定時総会 開会
13:30〜15:48 5階「エミネンスホール」
 高橋浩事務局長の司会で定款第31条第1項に基づいて、第88回定時総会の開催が出席者に伝えられ、定時総会の定足数である1,535事務所の過半数769名に対し、出席者100名、電子表決762名、計862名で定足数を上回り、定時総会が成立したことを報告して開会宣言がなされた。
 はじめに、昨年度の物故者3名への黙祷がささげられた後、加藤峯男理事による「建築士事務所憲章」の朗読があり、大内達史会長の挨拶となる。
 大内達史会長挨拶(要約):就任してあっという間の4年でした。昨年は日事連の会長にも就任しています。2年前には当協会の活性化のため何をなすべきかという永遠のテーマを掲げ追求してきました。ひとつずつ勘考していくのが大切ではないでしょうか。特定緊急輸送道路耐震診断の義務化、事務所法の制定、会員増強、東京三会の設置等に尽力し、東京三会行政懇談会、新事務所への移転、年会費の改正等を行ってきました。さまざまな企画を通した積極的な活動こそ、会員増強にもつながると信じています。そして、東京都はデザインビルドを採用する旨を発表しました。何とか阻止しようと働きかけております。そして、皆様の協力に感謝申し上げます。また、今井光専務理事が退任されます。長い間ありがとうございました。
 続いて、司会者一任の声で、定款33条に基づき、議長団を選任し賛同を得た。渋谷支部の臼井勝之議長他2名の副議長が登壇した。
 議事進行が議長団に移る。議長の円滑な運営についての協力を求める挨拶の後、議事録署名人2名が選任され、議案の審議となる。
議案の審議
 第1号議案「平成26年度事業報告の承認に関する件」と第2号議案「平成26年度収支決算の承認に関する件」は関連事項のため一括審議となり、それぞれの担当者が説明を行った。
 平成26年度事業報告の今井専務理事は「概要を中心に説明する」と断り、重点的に取り組んだ3件から説明した。
 1. 会員増強は、目標の2割には届かなかったが、それなりの結果が出た。
 2. 特定緊急輸送道路沿道耐震化の取り組みは、大きな成果を上げ、収入の中で大きな部分を占めた。
 3. 建築士法改正とその普及に向けた取り組みは、建築士法の一部を改正する法律が公布され、6月25日に施行となった。
 そのほかに、景観まちづくり講習会や青年部会基礎セミナーの積極的な実施、東京建築賞受賞作品見学会や新規事務所開設者向けの建築士事務所実務者講習会をはじめ、さまざまな研修会等にかなりの参加者があり、これからも続けていく旨の説明があった。
 平成26年度収支決算の承認に関する件は事務局の河元幸男経理課長より説明があった。
 監査報告は塩原達郎監事が担当し、監査報告書を読み上げた。
 ここで、文書による意見・質問が発表され、今井専務理事が回答にあたった。
 意見は3件あったが、内容は小事務所に光を当てた取り組みの要望や、新たな事業への期待等であった。
 まず、他支部の活動がわからないという質問に対しては、情報交換をよりいっそう進めていくとした。「建築ふれあいフェア」の実施方法について疑問があるとの件については、特定委員会担当理事である松枝廣太郎理事が代わって説明し、建築ふれあいフェアの、意味、意義、目的などを語り、限られた時間や場所の中で建築士事務所・当協会を知っていただく良い機会なので、皆様のご意見をいただきながら、より良いイベントにしたいと述べた。
 会場からの質疑は、まずは会費について。この問題は検討を継続しており、大小の事務所の会費のバランスは他を参考にしてやっていく。現在の財政収入は安定しているが、受託業務が大きな収入を占めてきた。今後厳しい状況の中で精査しながら統合的に検討していくとの回答であった。総括表にある繰越金について、利率が高すぎるのではないか、会費を安くするのに使えないかとの質疑には、これからの状況を考えると決して潤沢ではないと答えた。
 議長が第1号議案と第2号議案の承認を求めたところ、全会一致で承認された。
 続いて第3号議案「役員の選任に関する件」に移る。
 役員候補者選出監理委員会岡部成委員長から正会員理事候補と正会員監事候補が、そして今井専務理事から同一業界の関係者以外理事候補が発表され、第3号議案も全会一致で承認された。ここで、選任された理事、監事により、会長・副会長等を選任する初理事会のため議案審議は一時休止となる。
 15分後、再開され、議長より、会長、副会長、専務理事が選任されたことの報告があり、大内会長の挨拶があった。
 大内達史会長挨拶(要約):大役をまた2年間務めさせていただきます。当協会のため、あらゆる面を想定して進めていきます。どう生き延びてゆくかの後継者問題、定款の見直し、8月には事務所を移転させていただきます。新しい執行部の協力の下、さらなる皆様のご指導・ご協力を賜りたい。
三栖氏。
 挨拶に続き、三栖邦博氏の名誉会長推薦がなされ、全会一致で承認された。
 
報告事項
 平成27年度事業報告に関する件について今井専務理事から①建築士法の普及、②情報発信、③財政基盤の確保、④若手建築士へのアピール等、4項目に重点を置くとの説明があった。
 平成27年度収支予算の報告に関する件は、河元経理課長により、受託事業が0であること、事務所移転の費用の計上が昨年と大きく違ったことが説明された。
 審議がすべて終了し、正副議長団が退席する。
 
来賓挨拶
 (一社)東京建築士会可児才介副会長挨拶(要約):(一社)東京建築士会は建築士法に基づいた個人資格の団体です。JIAと一緒の東京三会での共通の課題で足並みをそろえた活動は、たいへんな力を持ったと思います。違う性格を持った会が、それぞれを生かすことで全体が盛り上がった。心からエールを送りたい。
可児氏。
 (公社)日本建築家協会関東甲信越支部 上浪寛支部長(本部副部長)挨拶(要約):東京三会で一緒にやっていますが、UIA大会の準備で関連団体が協力したのが最初だと思います。結果、建築士法が改正、施行となりました。普及に向けて共に活動に励みたい。
上浪氏。
退役役員表彰
 7名の代表で織本真一郎氏と今井光氏が壇上に上がった。
会員増強優良支部表彰
 会員増強特別委員会より上位6支部が表彰された。中央、新宿、渋谷、江戸川、八王子、港の各支部である。
 西倉努副会長が、すべての議案が承認されたことと、新しい執行部で頑張っていきますと述べ閉会となる。
第2部 第41回建築作品コンクール表彰式
16:00〜16:40 5階「コンコードボールC」
栗生氏。
 総会が長引いて遅れ気味で始まったが、会場は満席で熱気に溢れた。受賞者が紹介され、東京建築賞選考委員会 栗生明委員長から講評があった。
 賞状・記念品贈呈と続き、安井順一東京都都市整備局長の来賓挨拶の後、閉会となる。
 東京建築賞1作品のほか、4部門、計16作品が受賞した。
講演会
16:50~17:50 5階「コンコードボールC」
東京建築賞の表彰式の熱気が冷めやらぬ同会場で、萩生田衆議院議員の講演が行われた。
下記の要約のほかにも、これからの女性活躍社会と安全保障についての話、阿倍総理とのエピソード、国立競技場建設の裏話などユーモアを交えてお話しされ、時には会場から大きな笑いが起こる盛況ぶりであった。地方創生については、われわれ建設業界にとってヒントとなる貴重な意見もいただいた。以下、講演内容を要約する。
萩生田氏。
「阿倍政権の目指す成長戦略第4の矢」
萩生田光一(衆議院議員・自由民主党 総裁特別補佐 筆頭副幹事)
政治の道を志した動機:
高校生の時、地元八王子から新宿に通学していました。
汲み取りトイレなのはクラス40人の内、私の家だけということで、「ポットン八王子」とあだ名を付けられ恥ずかしい思いをしてきました。市に問い合わせたところ15年後に下水管がつながるという説明を聞き、目の前が真っ暗になり、何とか早くできないか? 誰がそれを決めるのか? という疑問を持ったのが政治の道を志すきっかけです。
地方創生という概念:
3年3カ月の下野で自民党の体質は変わりました。皆、政権交代時に地元に帰り、「世界経済の中で日本を議論することも大事なのだけれど、それを支えている中小企業や地方の苦労を政策で後押ししなければ、日本経済は前に進まない」という価値観を共有することができました。その中で芽生えたのが、地方創生という新しい概念です。
今までは霞が関が中心となってルールをつくっていましたたが、現場に合わないこともありました。これからは地方の皆さんが提言をし、それを国が認めて応援をしていこうということです。たとえば都市計画法では建たない建物も地元の自治体が、「まちの活性化に寄与できるし、税収も増え、雇用も増やすことができるから認めてくれ」というちゃんとした理由づけがあれば、例外も特区も認めていこうというものです。これは設計者にとっても仕事を増やすチャンスになると思います。
東京オリンピック・パラリンピックについて:
オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典ではありますが、さまざまな英知を結集して世界の方々に「日本の建築や科学技術は凄いな! 」と思われるものをつくることが、大事だと思っています。たとえば、競技場の椅子から暑い時は冷気を出す、椅子の後ろにモニターを設置して色々な角度から競技を見られるようにする、東京湾のレアアースを掘削してそれで電光掲示板をつくるなど、構想を練って準備をしています。そのようなことで世界から尊敬され、経済的にもお付き合いをしてほしいと言われるようなオリンピック・パラリンピックにしたいと考えています。
終わりに:
皆さま方には、日ごろまちづくりにご貢献いただいています。これからは、地方の時代、中小企業の時代です。どうぞプライドを持ってお仕事に従事していただき、景気が良くなった事務所からお金を使ってもらって、経済を回していただきたいと思います。
(報告と要約:田口 吉則/編集専門委員会)
懇親会
18:00~20:00 5階「エミネンスホール」
新役員の挨拶。
萩生田光一さんのたいへん興味深い講演の後、会員委員会の坂本哲さんの司会で懇親会開会が宣言された。
理事会にて会長に選出された大内達史さんが新理事と壇上に現れ挨拶。続いて萩生田光一衆議院議員、お馴染みの東京都議会自由民主党建築事務所政策研究会会長の秋田一郎議員を囲んで都議の方々が壇上に立ち、「TAAFに協力していく」との力強いお言葉をいただいた。続いて公明党東京都本部の副代表で都議の鈴木貫太郎さんも壇上へ。都議会民主党幹事長の中嶋義雄議員が建築に関する感想も話されお祝いの言葉をいただいた。
来賓の方々、他府県建築士事務所協会の方々が登壇し、神奈川会会長小林忠志さんが声高らかに乾杯の音頭をとった。コンパニオンも登場してしばらく懇親の時を過ごした後、本会賛助会会長佐藤登さんの挨拶もいただいた。
恒例となった本会相談役・台東支部の中村栄太郎さんの三本締め。竹松和利副会長の閉会挨拶となって、盛会のうちにお開きとなった。
栗田 幸一(くりた・こういち)
東京浅草生まれ/祖父、父と3代目/1970年 東海大学工学部建築学科卒業/1970~74年 伊奈建築設計事務所/1975年 父の経営する株式会社栗田建築事務所入社し、現在に至る/(一社)東京都建築士事務所協会台東支部支部長、編集専門委員会委員長
中田 千恵子(なかた・ちえこ)
1953年東京生まれ/インテリア設計事務所スペース201、日研学院講師を経て現在、一級建築士事務所ハウジング工房代表/東京都建築士事務所協会編集専門委員
田口 吉則(たぐち・よしのり)
1953年東京生まれ/(株)チーム建築設計代表取締役/東京都建築士事務所協会編集専門委員
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