宿泊研修:旧井上房一郎邸と鬼石多目的ホール
足立支部
松崎 孝平(東京都建築士事務所協会足立支部副支部長、松崎建設株式会社)
上:高崎市美術館の「旧井上房一郎邸」前で。
下:「鬼石多目的ホール」
 隔年で開催されている東京都建築士事務所協会足立支部の宿泊研修を、平成28(2016)11月11日(金)〜12日(土)、10名の参加者で開催した。
 出発当日の朝は土砂降りの雨だったが、バスが高速に入り、最初の見学場所である群馬県高崎市の「高崎市美術館」に併設された「旧井上房一郎邸」に到着するころには雨も小止みになった。旧井上邸はかつて東京・麻布にあったアントニン・レーモンドの「笄町の自邸」(昭和26/1951年)を精密に再現した住宅(昭和27/1952年)である。レーモンド・スタイルを知ることができる建築として、平成22(2010)年から公開されている。案内役の館長はかつて高崎市の建築課にいらした方で、建築についての造詣も深く、マニアックな説明に一同から感嘆の声が上がった。
 館長に感謝を述べ、宿泊場所である吾妻郡嬬恋村の「万座温泉日進舘」に早目の到着。万座温泉は硫黄濃度日本一であり、当館は大小9つの趣の異なった温泉が楽しめる。なかでも露天風呂はアワードでNo.1にもなっている名湯。温泉三昧と宴会を楽しんだ。
 翌日は藤岡市にある妹島和世建築設計事務所の設計による「鬼石多目的ホール」を見学した。室内外を限りなく一体に繋ぐガラスの壁や、屋根ラインを揃えるため体育館の床レベルを掘り下げる着想など、前日の井上邸とはまた違った設計の力を感じさせる。
 参加者は少なかったものの、共感したり反論したりの建築談義と、共に温泉に浸かった時間は、互いの距離感をいっそう縮めるものになった。
松崎 孝平(まつざき・こうへい)
東京都建築士事務所協会足立支部副支部長、松崎建設株式会社代表取締役