災害支援研修意見交換会
第5ブロック|令和8(2026)年3月13日(金)@かつしかシンフォニーヒルズ別館
大澤 律子(葛飾支部副支部長、ノオト建築設計舎二級建築士事務所)
平成23(2011)年の東日本大震災から15年の節目に、第5ブロック災害支援研修意見交換会が開催された。中林一樹東京都立大学名誉教授による基調講演「災害に強い安全で安心なまちづくり、建築士設計事務所の災害支援」を中心に研修が行われた。
開会は5ブロック運営幹事の葛飾支部小塊慶美副支部長の司会で進められ、同支部中村靖雄支部長が開会挨拶に立ち、第5ブロック(墨田・江東・葛飾・足立・江戸川支部)が水害リスクの高い地域であることに触れ、住宅設計において防災の視点を取り入れる重要性を強調した。
講演では、帰宅困難者対策の先駆者としてのご自身の歩みを紹介し、昭和58(1983)年に多摩地域の被害想定の中で初めてその概念を提唱したこと、そして東日本大震災時に東京で大きな課題となった帰宅困難者問題に長年取り組んできた経験が語られた。
【災害時に脆弱な社会構造】
さらに21世紀の災害の特徴として、地震や豪雨の頻発と高齢化社会の進行が同時に起きている点が指摘され、単身世帯や高齢者のみ世帯の増加、町会・自治会の機能低下により、地域の支え合いが弱まり、災害時に脆弱な社会構造となっている現状が示された。
【相次ぐ震度7】
地震災害については、阪神淡路大震災(平成7/1995年)から31年が経過する中で、新潟県中越地震(平成16/2004年)、東日本大震災(平成23/2011年)、熊本地震(平成28/2016年)、北海道胆振東部地震(平成30/2018年)、能登半島地震(令和6/2024年)と、震度7を記録する大規模地震が相次いで発生していることを説明された。
【首都直下地震の被害想定】
首都直下地震の被害想定については、国および東京都の最新データ(首都直下地震による建物倒壊・焼失等:最大約610,000棟、建物倒壊・市街地火災による死者:最大約23,000人/令和7/2025年内閣府公表)、(都心南部直下地震の建物被害:194,431棟、死者:6,148人/令和4/2022年東京都公表)が示され、建物の耐震化の進展により被害想定は減少傾向にあるものの、依然として甚大な被害が想定されることを強調された。
【複合災害と複眼防災】
また重要なテーマとして「複合災害」が挙げられ、被災者の視点では地震後に水害が発生するケース、行政の視点では複数災害への同時対応の必要性が説明された。能登半島地震後に同地域で発生した水害では、地震で損傷した建物がさらに被害を受けた事例や、仮設住宅が浸水する事例が紹介され、単一災害だけでなく複合的に備える重要性が示された。
これを踏まえ、「事前防災」、「被災後防災」、「複眼復興」を含む「複眼防災」という考え方が提唱され、復興においても複数の災害に強いまちづくりが必要であるとされた。
【水害対策】
水害対策では、従来の河川中心の治水から、流域全体で雨水を受け止める「流域治水」への転換が必要とされ、山林・農地・市街地が一体となった取り組みの重要性を説明された。
建築分野においては、耐震化に加えて「耐水化」という視点が提示され、床上浸水を防ぐための床高さの確保、1階RC造・上階木造の混構造、2階リビングの採用、雨水貯留施設の設置など、具体的な設計手法が紹介された。
足立支部の横村隆子理事のご提案で、進行役は誕生月にちなんだユニークな方法で選出され、和やかな雰囲気の中にも実践的な議論が交わされた。
特に、避難所開設時に建築士が応急危険度判定として関わる事例や、個人名で避難所運営に参画する取り組みが評価され、今後のモデルとして紹介された。さらに、マンションとの水害時避難協定の重要性についても言及があった。
メールで知った:23.1%/役員会で知った:73.1%/事務所に促された:3.8%
【基調講演の感想】
よかった:88.5%/まあまあよかった:11.5%/よくなかった:0%
・水害に対する意識が変わった。
・耐震化以外に必要なことがあると考えさせられた。
・地震×水害の複合災害への短期長期対策の話が聞けてよかった。
・地震だけでなく水害にも家づくりの重要性がわかった。
・事務所協会として今後取り組むべき事項の方向性が見えたように感じた。
・広い視点から地震や水害に強い街づくりの考え方がわかりやすく伝わった。
【意見交換会の感想】
よかった:73.1%/まあまあよかった:26.9%/よくなかった:0%
・各支部の活動が知れてよかった。
・もう少し時間をかけて話がしたかった、継続的に意見交換を行いたい。
・情報交換できたので有意義だった。
・時間が少なく感じた、楽しい意見が多くてよかった。
【時間の長さ】
長い:3.8%/ちょうどよい:69.2%/短い:26.9%
【今後の参加意向】
ぜひ参加したい:50.0%/参加したい:34.6%/内容による:15.4%
【次回取り上げてほしいテーマ】
・防災についての第2回目。
・水害と富士山噴火について。
・各支部防災に関する活動・防災技術の交流と継承について。
開会は5ブロック運営幹事の葛飾支部小塊慶美副支部長の司会で進められ、同支部中村靖雄支部長が開会挨拶に立ち、第5ブロック(墨田・江東・葛飾・足立・江戸川支部)が水害リスクの高い地域であることに触れ、住宅設計において防災の視点を取り入れる重要性を強調した。

中林一樹東京都立大学名誉教授による基調講演。(撮影:植竹和重)
基調講演:中林一樹東京都立大学名誉教授
【帰宅困難者対策】講演では、帰宅困難者対策の先駆者としてのご自身の歩みを紹介し、昭和58(1983)年に多摩地域の被害想定の中で初めてその概念を提唱したこと、そして東日本大震災時に東京で大きな課題となった帰宅困難者問題に長年取り組んできた経験が語られた。
【災害時に脆弱な社会構造】
さらに21世紀の災害の特徴として、地震や豪雨の頻発と高齢化社会の進行が同時に起きている点が指摘され、単身世帯や高齢者のみ世帯の増加、町会・自治会の機能低下により、地域の支え合いが弱まり、災害時に脆弱な社会構造となっている現状が示された。
【相次ぐ震度7】
地震災害については、阪神淡路大震災(平成7/1995年)から31年が経過する中で、新潟県中越地震(平成16/2004年)、東日本大震災(平成23/2011年)、熊本地震(平成28/2016年)、北海道胆振東部地震(平成30/2018年)、能登半島地震(令和6/2024年)と、震度7を記録する大規模地震が相次いで発生していることを説明された。
【首都直下地震の被害想定】
首都直下地震の被害想定については、国および東京都の最新データ(首都直下地震による建物倒壊・焼失等:最大約610,000棟、建物倒壊・市街地火災による死者:最大約23,000人/令和7/2025年内閣府公表)、(都心南部直下地震の建物被害:194,431棟、死者:6,148人/令和4/2022年東京都公表)が示され、建物の耐震化の進展により被害想定は減少傾向にあるものの、依然として甚大な被害が想定されることを強調された。
【複合災害と複眼防災】
また重要なテーマとして「複合災害」が挙げられ、被災者の視点では地震後に水害が発生するケース、行政の視点では複数災害への同時対応の必要性が説明された。能登半島地震後に同地域で発生した水害では、地震で損傷した建物がさらに被害を受けた事例や、仮設住宅が浸水する事例が紹介され、単一災害だけでなく複合的に備える重要性が示された。
これを踏まえ、「事前防災」、「被災後防災」、「複眼復興」を含む「複眼防災」という考え方が提唱され、復興においても複数の災害に強いまちづくりが必要であるとされた。
【水害対策】
水害対策では、従来の河川中心の治水から、流域全体で雨水を受け止める「流域治水」への転換が必要とされ、山林・農地・市街地が一体となった取り組みの重要性を説明された。
建築分野においては、耐震化に加えて「耐水化」という視点が提示され、床上浸水を防ぐための床高さの確保、1階RC造・上階木造の混構造、2階リビングの採用、雨水貯留施設の設置など、具体的な設計手法が紹介された。

テーブルごとのグループディスカッション。

各グループの発表。
グループディスカッション
第2部では、テーブルごとにグループディスカッションが行われ、「設計事務所として私たちにできること」、「現在の取り組みと今後の展望」をテーマに活発な意見交換が行われた。足立支部の横村隆子理事のご提案で、進行役は誕生月にちなんだユニークな方法で選出され、和やかな雰囲気の中にも実践的な議論が交わされた。

講評する中林先生。
講評
発表後の講評では、中林先生より、地域住民に建築士の存在を知ってもらうことの重要性や、日常的な相談関係から防災意識を高めていく必要性が示され、雪国の高基礎住宅の応用や屋根避難経路の確保などの技術的提案も話された。特に、避難所開設時に建築士が応急危険度判定として関わる事例や、個人名で避難所運営に参画する取り組みが評価され、今後のモデルとして紹介された。さらに、マンションとの水害時避難協定の重要性についても言及があった。

参加者集合写真。
おわりに
本研修を通じ、これまで進めてきた耐震対策に加え、防災全般への取り組みを各支部で本格的に推進していく必要性が共有された。今後は本研修をひとつの契機として、継続的な研修や意見交換を重ねながら、建築士事務所協会としての役割を明確にし、地域住民への啓発活動につなげていくことが期待される。
アンケート結果(取りまとめ:中村靖雄)
【参加のきっかけ】メールで知った:23.1%/役員会で知った:73.1%/事務所に促された:3.8%
【基調講演の感想】
よかった:88.5%/まあまあよかった:11.5%/よくなかった:0%
・水害に対する意識が変わった。
・耐震化以外に必要なことがあると考えさせられた。
・地震×水害の複合災害への短期長期対策の話が聞けてよかった。
・地震だけでなく水害にも家づくりの重要性がわかった。
・事務所協会として今後取り組むべき事項の方向性が見えたように感じた。
・広い視点から地震や水害に強い街づくりの考え方がわかりやすく伝わった。
【意見交換会の感想】
よかった:73.1%/まあまあよかった:26.9%/よくなかった:0%
・各支部の活動が知れてよかった。
・もう少し時間をかけて話がしたかった、継続的に意見交換を行いたい。
・情報交換できたので有意義だった。
・時間が少なく感じた、楽しい意見が多くてよかった。
【時間の長さ】
長い:3.8%/ちょうどよい:69.2%/短い:26.9%
【今後の参加意向】
ぜひ参加したい:50.0%/参加したい:34.6%/内容による:15.4%
【次回取り上げてほしいテーマ】
・防災についての第2回目。
・水害と富士山噴火について。
・各支部防災に関する活動・防災技術の交流と継承について。

大澤 律子(おおさわ・りつこ)
東京都建築士事務所協会葛飾支部副支部長・空家委員会 委員長、ノオト建築設計舎二級建築士事務所
東京都生まれ/stand fm.「空き家もったいない委員会」ラジオ配信中(https://stand.fm/channels/64958365b352effb9d4619c6)
東京都生まれ/stand fm.「空き家もったいない委員会」ラジオ配信中(https://stand.fm/channels/64958365b352effb9d4619c6)
カテゴリー:支部 / ブロック情報
タグ:第5ブロック






