スイスの現代建築といえばピーター・ズントー。大学の研究室の本棚にあった彼の特集号の聖ベネディクト教会が写った表紙を見ては、いつか訪れてみたいものだと思っていました。
クール駅から出立し、鉄道に揺られること一時間でSumvitg-Cumpadials駅に到着。旅の記録には、そこで偶然通りかかった親切なアルマンドさんという方の車に乗せてもらい、昼過ぎに聖ベネディクト教会に着いたと書かれています。
その建築はスイスの豊かな山あいの風景の中につつましく、でもしっかりと地に根を張ってたたずんでいました。鱗のような小さな木のパーツに覆われた涙型の建物の内部は、ひっそりと心地のよい光に満たされていて、その簡素な空間に心が洗われました。壁から浮き出た柱の裏側をクリーム色に着色し、自然光を反射させるディティールに驚いたことは今でも鮮烈に覚えています。
外に出て振り返ると、山と集落の風景と呼応し屹立した姿。形状は特異なのにも関わらず、教会はスイスの大地に溶け込んでいるように感じました。その空気感を何とか自分の中に取り込もうと、その場に座り込み必死にスケッチしました。
スケジュールが分刻みの建築見聞旅行では、いつも写真を撮ることばかりに気を取られてしまい、その場でじっくりスケッチすることができないのですが、この絵は現地で建築を噛みしめて描くことができた思い出の1枚です。
濱野 真由美(はまの・まゆみ)
東京都建築士事務所協会千代田支部、日建設計
1987年 兵庫県神戸市生まれ/2009年 大阪大学工学部地球総合工学科卒業/2011年 大阪大学大学院工学研究科建築工学コース修了/2011年〜 日建設計/入社後、意匠設計者として設計業務に携わったのち、2022年より同社イラストレーションスタジオに在籍
1987年 兵庫県神戸市生まれ/2009年 大阪大学工学部地球総合工学科卒業/2011年 大阪大学大学院工学研究科建築工学コース修了/2011年〜 日建設計/入社後、意匠設計者として設計業務に携わったのち、2022年より同社イラストレーションスタジオに在籍
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