御徒町のオフィスビル見学会(現場編)
台東支部、世田谷支部|令和6(2024)年6月21日@御徒町
鈴鹿 美穂(東京都建築士事務所協会台東支部支部長、川島鈴鹿建築計画)
現場説明風景。(撮影:大平 孝至)
現場に置かれた模型。
2階。
地下免震階。
1階を見下ろす。
記念撮影。
懇親会風景。
 「アメ横」があるJR御徒町駅から東へ行き、首都高の下の交差点を渡ると、下町風情を点在させながらもオフィスとマンションに建て替わりつつある、台東区のまちなみが現れる。長屋や個人商店は消えていき、仮囲いと集合住宅のお知らせ看板が立つ。そんな街の変化を眺めながら、私は毎日朝と夜、21kgの和犬の雑種と早足で犬の散歩をしている。
 そんな散歩のコースに、RC造のオフィスビルの現場が始まった。いつも通りチェックすると、設計者はMMAAA、本橋良介世田谷支部長の名前を見つけた。それからは通るたびに、仮囲いの隙間から覗くことにしていた。
 躯体が見えてくると、斜めに交差する柱が見えた。とはいえ仮囲いの隙間からチラッとしか見えず、それでも力の入った建築作品の匂いは十分感じられた。その頃私も本橋さんも支部長になったばかりで、支部長会議で会うようになったところだったので、早速この話題をもちかけ、強引に見学会をお願いした。それから10カ月ついに上棟し、施工者のナカノフドー建設梅田修嗣所長をはじめ、現場の皆様のご好意により現場見学会を開催していただけた。
 見学会は台東支部、世田谷支部合同開催とし、第2ブロックの文京支部、北支部も加わって28名が参加した。

 「(仮称)御徒町のオフィスビル」は、RC造地上10階、高さ43.89m、延べ床面積1626㎡の規模。斜柱とワッフルスラブの躯体をあらわした3面がガラスファサードの建築である。前面道路が狭く、商業地域で建蔽率100%のところを41.38%とし、敷地両側に空地を設け、天空率によって高さをとる選択をしている。
1階エントランスには広い外部空間があり、中間階にはバルコニーがめぐらされているというように、密集地のオフィスビルとしてのあり方に、新しい視点を試みている。
 斜柱もスラブもシャープな印象で、ナカノフドー建設が難しい躯体工事に取り組み、コンクリートが美しく打ち上がっている。2フロアごとに柱が交差するため1階おきにスラブ勝ちかサッシ勝ちになる、コーナーの柱の接合など、頭脳プレーがディテールに見てとれる。面積、温熱環境、音などにも施主の意思と理解を得ての計画であり、それゆえの力が宿る建築が生まれる過程を感じた。
 最後は雨あがりのピットに2、3人ずつ潜り、免震装置も確認してきて、皆満足げな顔で見学会を終えた。
 その後は18名が参加しての懇親会となり、近くの居酒屋「真澄」にて、諏訪の「真澄」の冷酒を何本も開けつつ、賑やかで和やかな交流ができた。
 本橋支部長、世田谷支部のみなさま、ありがとうございました。
鈴鹿 美穂(すずか・みほ)
建築家、東京都建築士事務所協会台東支部、川島鈴鹿建築計画共同代表
1966年 神奈川県生まれ/1989年 東京家政学院大学卒業/1999年 川島鈴鹿建築計画設立
カテゴリー:建築作品
タグ:見学会