そんな散歩のコースに、RC造のオフィスビルの現場が始まった。いつも通りチェックすると、設計者はMMAAA、本橋良介世田谷支部長の名前を見つけた。それからは通るたびに、仮囲いの隙間から覗くことにしていた。
躯体が見えてくると、斜めに交差する柱が見えた。とはいえ仮囲いの隙間からチラッとしか見えず、それでも力の入った建築作品の匂いは十分感じられた。その頃私も本橋さんも支部長になったばかりで、支部長会議で会うようになったところだったので、早速この話題をもちかけ、強引に見学会をお願いした。それから10カ月ついに上棟し、施工者のナカノフドー建設梅田修嗣所長をはじめ、現場の皆様のご好意により現場見学会を開催していただけた。
見学会は台東支部、世田谷支部合同開催とし、第2ブロックの文京支部、北支部も加わって28名が参加した。
「(仮称)御徒町のオフィスビル」は、RC造地上10階、高さ43.89m、延べ床面積1626㎡の規模。斜柱とワッフルスラブの躯体をあらわした3面がガラスファサードの建築である。前面道路が狭く、商業地域で建蔽率100%のところを41.38%とし、敷地両側に空地を設け、天空率によって高さをとる選択をしている。
1階エントランスには広い外部空間があり、中間階にはバルコニーがめぐらされているというように、密集地のオフィスビルとしてのあり方に、新しい視点を試みている。
斜柱もスラブもシャープな印象で、ナカノフドー建設が難しい躯体工事に取り組み、コンクリートが美しく打ち上がっている。2フロアごとに柱が交差するため1階おきにスラブ勝ちかサッシ勝ちになる、コーナーの柱の接合など、頭脳プレーがディテールに見てとれる。面積、温熱環境、音などにも施主の意思と理解を得ての計画であり、それゆえの力が宿る建築が生まれる過程を感じた。
最後は雨あがりのピットに2、3人ずつ潜り、免震装置も確認してきて、皆満足げな顔で見学会を終えた。
その後は18名が参加しての懇親会となり、近くの居酒屋「真澄」にて、諏訪の「真澄」の冷酒を何本も開けつつ、賑やかで和やかな交流ができた。
本橋支部長、世田谷支部のみなさま、ありがとうございました。
鈴鹿 美穂(すずか・みほ)
建築家、東京都建築士事務所協会台東支部、川島鈴鹿建築計画共同代表
1966年 神奈川県生まれ/1989年 東京家政学院大学卒業/1999年 川島鈴鹿建築計画設立
1966年 神奈川県生まれ/1989年 東京家政学院大学卒業/1999年 川島鈴鹿建築計画設立