東京都建築安全支援協会の業務について
評価委員会業務、耐震化推進業務
木村 修(東京都建築安全支援協会代表理事、東京都建築士事務所協会副会長・台東支部)
 一般社団法人東京都建築安全支援協会(以下「支援協会」)では、①独自受注業務、②耐震評価総括業務、③事務所協会会員への支援サービスの3つを事業の柱としています。  今回は、これらの中で特に重点をおいている「評価委員会業務」と「耐震化推進業務」の要点を、以下で紹介します。
図1 評価委員会を中心とした耐震対応
表1 設計変更の区分と審査
評価委員会業務
 (一社)東京都建築士事務所協会(以下「事務所協会」)に設置された建築物耐震改修評価特別委員会(以下「評価委員会」)では、建築物の耐震評価業務を行っています。この評価業務について、支援協会で耐震評価総括業務を継続します。幅広いサービスを提供しますので、ご利用ください。
 図1に示す通り、評価委員会を中心とした耐震化推進体制を「支援協会」内に確立し、評価件数を増大させることにより事務所協会内の耐震業務の拡大を図ります。
 建物所有者に対しては「支援協会」内のサービスメニューを充実させて耐震診断ニーズの発掘を図り、事務所協会の会員事務所(以下「会員事務所」)の耐震化業務を増大させます。会員事務所に対しては診断・補強マニュアル等を提供し、事前相談を実施するなどして、手戻りない診断・設計を実現します。評価委員会では、事務所協会の評価事務局を補佐してスムーズな審査体制を提供します。また、過去の評価結果に対する質問・問合せに迅速に対応し、信頼のある評価体制を確立します。
 ぜひ評価委員会の耐震評価のご利用をお願い致します。(図1)

【診断の区分】
 評価委員会では旧耐震建物だけでなく、新耐震建物、改修建物、用途変更建物などに対する耐震安全性の評価を幅広く行っており、以下の評価区分があります。
◇耐震診断評定:旧耐震建物、新耐震建物、改修予定建物、用途変更予定建物
◇耐震補強評定:補強が必要と判定された建物の補強計画の評定
◇耐震診断・補強評定:耐震診断の評定とこれを受けた補強計画の評定

【事前相談】
 耐震診断の方法、補強方法、報告書の作成などについて、幅広い相談に無料で事務所協会の評価委員が応じています。事務所協会の評価事務局に申し込みください。
jimu27@taaf.or.jpjimu17@taaf.or.jp

【設計変更】
 変更が多い耐震補強工事の変更対応に協力します。軽微な変更は相談を含めて無料で対応しますのでご利用ください。(表1)
図2 東京都における「特定沿道建物」の耐震化の実施状況(令和2/2020年12月末現在)
図3 東京都の耐震化の目標
図4 補強目標
図5 震度6強の地震による倒壊確率
耐震化推進業務
【東京都における「特定沿道建物」の耐震化の実施状況】
 図2は、令和2(2020)年における「特定沿道建物」の耐震化の実施状況です。
 耐震性が不足すると診断された建物の中で耐震改修が未実施の建物は現在でも2,350棟存在し、「特定沿道建物」の耐震化率は86.7%にとどまっています。
 建物の耐震性能Is値が0.30を下回るなど耐震性が極めて低い建物の耐震化が遅れている傾向が指摘されています。

【東京都の耐震化の目標】
 東京都では耐震化の目標を耐震化率から総合到達率(震災後に都県境の任意の地点から都内の任意の地点に到達できる確率)に変更し、今後はIs値が0.30未満の建物の解消を重点的に目指す施策としています(段階的耐震改修の推進)。(図3)

【段階的耐震改修の推進】
 段階的耐震改修を推進し、Isが0.30未満の建物を解消し、建物の倒壊確率を大幅に低減することにより、総合到達率100%を目指します。支援協会はこの活動を支援しており、評価委員会の耐震評価にも協力しています。(図4)
◇補強計画
① 段階的耐震改修の状態が長期間継続する場合に備え、できるだけ高い耐震性能の確保に努める。
② 大きな偏心、制限軸力を超える下階抜け柱など、大きな地震被害を受ける可能性のある耐震性能上の弱点は必ず改修する。
③ 補強後の各階の強度分布(CTU・SDの分布)は、できるだけ一様とし、かつ、補強後のSD指標が低下しない計画とする。
◇震度6強の地震による倒壊確率(図5)
Is値が0.30未満の建物は、補強することにより倒壊確率が大幅に改善される。
木村 修(きむら・おさむ)
東京都建築士事務所協会台東支部支部長、株式会社パッソン一級建築士事務所
1952年 茨城県生まれ/1970年 東海大学工学部建築学科卒業後、八千代エンジニヤリング株式会社建築部入社/1989年株式会社パッソン入社/1994年同社代表取締役就任、現在に至る