令和5年度国への予算要望を提出
自民党東京都支部連合会へ提出。
 当会は、令和4(2022)年10月6日、令和5年度国家予算等に関し、東京建築設計関連事務所協会協議会(通称TARC)のメンバーである(一社)東京構造設計事務所協会、(一社)東京都設備設計事務所協会及び(一社)日本建築積算事務所協会関東支部の3団体と共同して、自由民主党東京都支部連合会に対し次の2項目の要望書を提出しました。
 以下に提出した要望書の概要を示します。
1 令和2年4月に改正意匠法が施行され、建築物・内装の意匠登録が出来るようになりました。建築の「意匠」を創作者の権利として保護しようという、この新しい制度の今後の定着と発展を目指して、特許庁など関係行政庁と、建築設計関連団体との間の定期的な懇談の場を設けて頂きたく、要望いたします。
 令和2年4月の改正意匠法の施行から2年以上が経過し、新たに登録された建築物・内装の意匠は本年4月の時点で数百件に上り、今後も年月の経過に比例して増え続ける見通しです。
 この改正により、建築物・内装の「意匠」が創作者の権利として保護されることになりました。
 意匠法第2条第1項には「意匠」の定義として「視覚を通じて美感を起こさせるもの」と書かれていますが、意匠が登録される要件としての新規性や類似性がどのように判断されているのかが明示されておらず、具体的な運用の中でどのように判断されているのか、制度の運用者と利用者との間でその基準が共有されていないと思われます。
 また、日本各地に残る歴史的な街並みは、その地域の持つ特性から導かれた普遍性のある要素を模倣することによって、創り出されたと考えることができます。
 こうした「普遍性」を持ち得るデザインにまで意匠登録者の独占的な使用権を認めることは、結果的に社会が共有すべき利益を毀損することにはならないでしょうか。
 日本の建築文化をこれからも成熟させ、発展させるために、建築設計者も共感できる「建築の美感を起こさせる意匠」とはどういうものかという価値観を、制度を運用される行政の皆様との間で、お互いに共有していきたいと思います。
 以上の趣旨で、標記の通り要望するものです。
2 既存建築物の改修設計の業務内容は建物用途や改修目的によって大きく違い、千差万別であり、発注者と受託者が共通した理解のもとに業務を遂行することが困難な場合も少なくありません。業務ビルや病院施設、共同住宅などの代表的な建物用途について、業務区分(調査、基本計画、基本設計、実施設計、工事監理)毎に業務内容を明示した標準仕様書の策定をご検討いただくと共に、各設計業務の業務報酬基準を設定していただきたく要望いたします。
 さらに、適正な設計業務期間の策定、並びに改修内容・範囲の変更が生じた場合は業務期間の延長についてもご配慮いただきたく要望いたします。
 既存建築物の改修設計において、建築設計事務所が受託した設計業務(意匠・構造・設備・積算)を遂行していくためには、適切な設計業務報酬基準の設定と共に、発注仕様書の内容が明確に定められている必要があります。
 現状では発注仕様書の内容と受託業務の実態が乖離し大きな変更や現況調査が必要となる状況が見受けられます。これは、既存建築物の改修設計の業務内容が建物用途や改修目的によって大きく違い千差万別であるため、発注者と受託者が共通した理解のもとに業務を遂行することが困難であることが一因となっています。さらには、その多様性ゆえに、改修設計業務を構成する各業務を包含した統一的な標準発注仕様書を策定することが極めて困難であるという事情も考慮する必要があります。
 新築の設計業務報酬基準とは異なり、改修設計については標準的な基準が示されていないことから、適切な設計料率が設定されずに発注がなされている状況も散見されます。
 このように、改修設計の発注仕様書の内容に不明確な部分があるために想定以上の業務負担(度重なる確認作業や内容照査等)が課されることになり、精度の高い図面や積算内訳書の作成の障害となります。一方で、改修設計の業務報酬基準が未整備の現状も相俟って充分な報酬を受領できず、建築設計事務所の経営に大きな影響を与えています。
つきましては、標記の通り要望いたします。