知事指定管理研修会開催
研修委員会|令和3(2021)年11月18日@本会会議室よりWeb講習
鷹取 奨(東京都建築士事務所協会南部支部副支部長、鷹取1級建築士事務所)
東京都講演。
宮原浩輔常任理事の講演。
特別講演の神本豊秋さん。
 知事指定講習である開設者・管理建築士のための「建築士事務所の管理研修会」が開催された。
 今回はコロナ禍における感染拡大防止を鑑み、本部会議室よりのWeb講習会となった。
東京都講演
 最初に、東京都都市整備局市街地建築部建築企画課より4名の講師を招き、以下のテーマで講演いただいた。
 ①建築法にかかわる押印廃止制度について/吉村尚久建築士担当課長代理、②建築基準法第52条第14項の規定に基づく容積率緩和について/津金圭子市街地担当課長代理、③駐車場条例改正について/水上健建築担当課長代理、④建築物省エネ法の現状と今後/寺田祐宏設備担当課長代理。
 いずれも建築設計に携わる者には必要かつ重要な内容で、理解を深められるものであった。
変化するニーズと建築士事務所の動向
 次に、宮原浩輔本会常任理事より「変化するニーズと建築士事務所の動向」についての講義があった。
 SDGsというキーワードが世界的な広がりを見せる中、建築が環境問題に対して何が可能か、建築物の省エネとリユースを軸にした講義で、今後どこを向いて進んで行けばいいのかを考えさせられ、そのヒントをいただけたと思う。
インボイス制度──消費税免税事業者への影響
 3つ目の講義は、堀内行夫東京税理士会板橋支部副支部長・堀内行夫税理士事務所より「インボイス制度──消費税免税事業者への影響」についてご講義いただいた。
 令和5(2023)年10月より導入されるインボイス制度について、特に個人事務所などの小規模事務所における税務処理の注意点について、わかりやすく解説していただいた。
特別講演:再生建築の可能性について
 最後の特別講演は、神本豊秋(株)再生建築研究所代表取締役社長より「再生建築の可能性について──ミナガワビレッジでの設計の職能の広げ方」について。
 近年、従来のスクラップ&ビルドから、建築物の改修・再利用していこうというニーズが高まりつつあり、それは宮原さんの講義でも触れられていたSDGsという潮流にも呼応するものである。もちろん、既存建築物のリニューアルには、構造的安全性、避難等の安全性、建設当時から変遷してきている建築基準法への対応等、建築士にとっては新築にはない難しさもあり、また施工段階においても「解体してみなければわからない」部分が多々ある。つい腰が引けてしまいがちな分野ではあるが、神本さんはそれに真正面から取り組まれている。
 講演の前半では、これまで神本さんが手掛けられて来た「再生建築」の数々の事例をスライド等で紹介いただき、法的、構造的にクリアしなければならない問題への対応の苦労を中心にお話しいただいたが、そういった技術的な側面だけでなく、まちづくりまで視野を広げ、明確なコンセプトをもって計画・設計に当たられていることに感銘を受けつつ、興味深く拝聴した。
東京建築賞受賞作「ミナガワビレッジ」をめぐって
 特別講演後半では、自身の事務所も入居されており、当会が主催する第46回東京建築賞においてリノベーション賞を受賞した「ミナガワビレッジ」について、現地を訪れてオーナーと初めて話をされた時から竣工までのプロセスを、順を追うようにつぶさにご紹介いただいた。
 「再生建築」を計画・設計する上での思考の流れを、オーナーのご希望だけでなく、周辺環境への配慮と貢献などを軸にしながら、またそういったコンセプト面だけでなく、実際にどの部分をどう変えて行ったのか、構造的・法的な苦労も交えてご紹介いただき、「再生建築」の可能性を示していただいた思いである。
研修委員会の一員として、今回の講習会の成功を喜ばしく思うと同時に、今後も意義ある講習会を企画・運営して行かなければならないと身が引き締まる思いがした。
鷹取 奨(たかとり・すすむ)
東京都建築士事務所協会南部支部副支部長、研修委員会、鷹取1級建築士事務所
1958生まれ/芝浦工業大学建築学科卒/鷹取一級建築士事務所、東京都建築士事務所協会南部支部