思い出のスケッチ #292
蔵前小学校図工展覧会
川島 茂(東京都建築士事務所協会台東支部/川島鈴鹿建築計画)
 台東区立蔵前小学校では図画工作の「展覧会」を二年毎に開催し、保護者らは体育館いっぱいに展示された作品を通して、子どもたちの成長を見ることができます。
 私たちの開催する、「モノづくりワークショップ」をきっかけに、台東区立蔵前小学校の展覧会に出展される六年生の作品課題の出題、制作指導と展示計画を、昨秋から担当する機会をいただきました。
 作品テーマは「小学生の六年間」とし、子どもたちそれぞれにあわせて切った「いま(六年生)の背丈」のツガ角材に、小学生時代の自分を表現することを求めました。なかなか小学生が体験することのない大作への挑戦です。モノづくりワークショップを開催して常々感じるのは、「ひと」の「もの」をつくる意欲の旺盛さ。子どもたちではなおさらで、出題直後に原寸の角材を手にした彼らの興奮はたいへんなもの。自ら角材に沿って立ち、頭の高さと材の長さを確認する様がそこここでおこり、すぐにも制作に取りかからん勢い。
 しかし、この課題制作は「設計図」を描くことから始まります。制作に先立ち、それぞれの思いを図や文字にまとめることでつくる意欲を強化し、その意図を露わにすることが創作の魅力を深化すると考えたからです。建築家が図面やドローイングを介して、目指すべき建築を検証、創造しつつ、つくることへの魅力に益々引き込まれていくように。
 このスケッチは課題を検討するなか、サンプルとしてつくった私の作品の設計図です。ちょうど六年生の私の娘の背丈の材に、学年毎の目の高さに瞳大の穴を貫通させ、成長を示す折れ線を角材が纏うというもので、屈み覗けば当時の娘の視野が再現されます。
 さて、蔵前小学校の六年生らに、この制作は思い出となったでしょうか。八七本の成長の個性が体育館に整列するのは一月二八日からの三日間。どのような景色となるかを楽しみに待ちます。
川島 茂(かわしま・しげる)写真右
1965年 京都府生まれ/1992年 日本大学大学院修了/現在、川島鈴鹿建築計画 共同主宰