思い出のスケッチ #339
モロカイ島
森川 浩弌郎(元YENDO ASSOCIATES INC.、米国コネチカット州在住)
 1977(昭和52)年の秋、私はアメリカの建築を見て回ろうと、40日間のアメリカ一周の旅に出ました。十分な旅費を用意できなかったので、アメリカ国内はグレイハウンドのバスと安宿の旅でした。日ごろ建築雑誌や写真で見ていたアメリカの建築を、実際に見ることにわくわくして主な都市を周り、感動していました。しかしハードなスケジュールと貧乏旅行にすっかり疲れてしまい、最後に日本に帰る途中ハワイに立ち寄りました。
 ホノルルの空港に降り立った時、ほのかな花の香りがしました。ホノルルとハワイ島に滞在してハワイを満喫し、本当にハワイはパラダイスだと感じ、いつの日か住んでみたいと夢見ていました。1991(平成3)年秋、ニューヨーク転勤の命を受け、駐在員として赴任して2年間はマンハッタン暮らしをしていましたが、勤務が長くなることになり、コネチカット州に住居を購入し、マンハッタンの事務所まで通勤していました。1997(平成9)年に帰国する命令が下りましたが、苦慮した結果、アメリカに残る決断をして退職しました。
 その後、昨年(2020/令和2年)春までコネチカット州で快適に暮らしていましたが、歳を重ねるにつれて冬の寒さに耐えられず、昔夢見たハワイ移住を決断したのです。ところがホノルルは私が初めて見た、のどかな様子がすっかり変わって高層ビルが立ち並ぶ大都会になっていました。がっかりした私は最もハワイらしいところを探し求め、モロカイ島に到着してやっと夢がかなったのです。モロカイ島はオアフ島とマウイ島の間にある人口7,500人の小さな島です。ここでの生活は、都会的な便利さや楽しみは何もありませんが、静かな自然と温暖な気候に恵まれ、ゆっくりと暮らすことができます。
 スケッチは自宅のベランダから、西に40kmの海峡を隔てたオアフ島のダイヤモンドヘッドが見える風景を描いてみました。日が沈む頃には毎日表情が違う夕日を見ることができます。
森川 浩弌郎(もりかわ・こういちろう)
1960年 大阪市立都島工業高等学校卒業/1960年 大阪で圓堂建築設計事務所に入所/1962年 圓堂建築設計事務所東京に移転にともない東京に移転/1966 - 1968年 圓堂建築設計事務所勤務中、中村順平先生に師事する/1991 - 1997年 YENDO ASSOCIATES INC.ニューヨーク事務所に勤務/現在、米国コネチカット州に在住