業務フローの見直しとICTの導入および情報セキュリティについて
加藤 秀司(株式会社翔コンサルティング)
ICT導入は必須
 選ばれ続ける企業であるために付加価値を生み出し続けることが、今後よりいっそう重要になる。一方で日本は人類史上未曾有の人口減少と労働人口比率の低下に直面する。これらの課題を同時に解決するために、ICT導入は必須であると考えなければならない。
 導入に当たっては、改善につながる目的を明確にするために、①業務フローの列挙、②当該業務の必要性判断、③必要な業務の実施方法と改善手段としてのICT導入の検討、④施策の実施と検証および改善というような手順を踏まないと失敗する可能性が極めて高い(手段の目的化は失敗を招く)。また、ICT導入は高価で高機能を有するツールである必要はなく、既に使用しているツールの機能や使い方の見直し※1が大きな改善につながるケースもある。
 上記の③で必要な機能を確認して導入を検討することにより、自社に合った最適な職場環境を実現することができる。以下、いくつかの事例を記載する。

※1請求書作成に10日/月を費やしていた企業が、既に使用しているツールの機能見直しで同業務を3~5時間/月に大きく改善することに筆者が携わった(同じデータを何度も集計、入力していた作業を、一度の入力で請求書作成機能まで反映させることで自動化を行った)。業務フローの見直しで同様の状況を発見できれば、大幅な効率化につながる可能性が高い一方、気が付かなければネガティブな意味で経営に大きな影響を与え続けることになる。
最適な職場環境を
 企業において会計や人事労務に関わる業務は必ず発生すると思われるが、これらをERP※2に置き換えることで、データの一元管理が可能となり、効率化、利便性の向上につながる。加えて財政状況等がリアルタイムで把握できるため、経営に関する意思決定、戦略立案等の迅速化が最大のメリットとなる。
※2 Enterprise Resources Planning の略。一括資料請求が可能なサイトなど複数の製品比較ができるほか、無料お試し期間を設定している製品もある。
 付加価値を生み出し続ける風土、文化を醸成する方法として、SECIモデル※3が改めて見直されている。
※3 ナレッジマネジメントの基礎モデル。属人の頭の中にあるデータを可視化、共有化して、それらを基に新たなアイデアを創出することを繰り返し行う。これにより付加価値を生み出し続けるという野中郁次郎氏の純国産理論である。
【日本マイクロソフト】
 クラウドビジネスの事業規模拡大等による産業構造の変化に対して、強い製品のライセンス販売から協業による価値ある製品の提供へと変貌を遂げる。個々人の力への依存からチームによるイノベーション創出に風土、文化を変更、定着させるために以下の評価を行うこととした。
・自分の成果を得る。
・自分の成果のために他のメンバーからの協力を得る。
・他のメンバーの成果のために自分が協力する。
【Apple】
 本社のトイレを4つにすることで、多くの偶然の出会いやランダムなつながりが多くのアイデアにつながり製品化した。
 製品ライフサイクルが短くなることで、新製品投入サイクルも短くする必要があり、そのためには新たなアイデアを出し続ける必要がある。
 上記以外の事例も含めて、詳しい解説をしているサイトが複数あるので、自社導入のきっかけづくりとして、ぜひ確認してほしい。
サイバーセキュリティ対策
 ICT導入に当たり、情報セキュリティポリシーの導入・周知、ウィルスソフトの導入、社内における情報リテラシーの向上等は必須であるが、中小企業経営者を対象とした最近のアンケート調査において、サイバーセキュリティ対策は進んでいない。被害にあえば自社の業務が滞ることになる。また人材確保や信頼にも大きな影響を及ぼすため、他企業との比較ではなく、IPA※4が提供している情報等に基づいた対応を行いたい。
※4 Information-technology Promotion Agency 独立行政法人情報処理推進機構
情報セキュリティポリシー、セキュリティガイドライン策定のための参考資料、情報セキュリティ自社診断など、無償で導入できる資料を数多く提供している。
加藤 秀司(かとう・しゅうじ)
株式会社翔コンサルティング代表取締役
大手証券会社、保険会社を経て、主に中小企業経営者に対するお金を中心としたコンサルティングを行う/2015年 株式会社翔コンサルティングを設立/中小企業に対して、経営資源である「人、お金、情報」を中心とした業務改善、戦略立案等のコンサルティング事業を行っている。
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