東京消防庁連絡会議開催
令和3(2021)年3月10日(水)@本会会議室(Web会議併用)
中村 聡(東京都建築士事務所協会法制委員会委員、荒川支部、ナカムラ建築設計室)
会議風景。東京消防庁予防課からは、南野秀司建築係長のほか、山本祐主任、髙野智也副主任に出席いただいた。左は挨拶する寺田宏東京都建築士事務所協会副会長。
 東京消防庁予防課の南野秀司建築係長ほか2名のみなさまと、本会会議室で「東京消防庁連絡会議」が行われた。例年、当協会より会長、副会長及び法制委員会委員が出席しているが、緊急事態宣言下という昨今の事情から先方より少人数での開催要望を受け、法制委員会委員はWeb参加とし、当協会からのリアル出席者は寺田宏副会長、前川秀則専務理事、加藤峯男委員長および市村憲夫委員(司会)と限られたメンバーで開催の運びとなった。
 内容は多岐にわたったが、ここでは会員の皆さんにぜひご承知いただきたいテーマを中心にご紹介させていただく。
小規模な建築物の安全確保に向けた取り組み
 まず令和元(2019)年6月25日の建築基準法改正を受けて、特殊建築物のいずれかへ用途変更する場合の確認申請を要する基準が、延床面積100㎡から200㎡に緩和されたことは周知の通りである。これにより確認申請によって把握できる用途変更建物が減少するため、福祉保健局で管轄する用途の建築物の情報を、建築行政と消防行政においても共有できるよう覚書を交わし(締結日:令和2/2020年6月22日)、用途上必要な消防設備を備えない建築物の増加を防止する考えとのこと。
 しかし小規模な店舗等これで監視できない用途の建物があることも事実であるので、たとえば消防に事前相談に来る内装業者等に対して必要に応じて建築士の意見を伺うように促すなど、建築物の安全安心の確保に努めたい考えを示された。
消防同意の電子化
 コロナ禍によって大きく変わる業務環境の下、われわれの実務に関連して、確認申請書類など公文書の押印書類が大幅に減っている。ここ数年で確認申請の電子化も進んでおり、東京消防庁としても消防同意の電子化の検討を始めている。
 現在の対応として、指定確認検査機関において電子申請された建築確認に対し、紙で印刷されたものを建物規模と用途を限定して消防同意を行っているが、今後もその範囲を拡大していく方針とのことである。
 消防同意の電子化にかかるニーズが果たしてどの程度あるのか把握したいという問いに対し、建築実務上の電子化はかなり進んでいるためニーズは高いと考えられ、またさまざまな面で時間短縮の恩恵が得られることを申し添え、特に後者の点では双方にメリットがあるとの認識が共有できた。
「特定小規模施設用自動火災報知設備」の取り扱い
 消防同意で補正を要した指摘事項の中で、令和元(2019)年6月25日施行の建築基準法改正に伴う「特定小規模施設用自動火災報知設備」の取り扱いについて、感知器のみの簡易タイプは2階建てまでにしか使えないという消防法上の規定があるが、これを3階建ての建物に誤って適用するケース、また無窓居室でも同様にこれを誤って適用するケースがあり、注意を促す説明があった。

 会議全体を通して、南野秀司建築係長のお人柄もあって、終始活発な意見交換が行われた。消防同意電子化の議題からBIMの活用や海外における事例、設計図書の原本管理へと話題は発展したが、SDGsやコロナ禍という大きな時代変動の中、ますます多様化・複雑化する社会のニーズにいかに対応していくべきか、消防行政側もわれわれと同様に苦慮しているとの発言が印象的であった。
 最後に寺田副会長より、建築の安全安心を保つという共通の使命を担う立場として、このような情報交換の場を大切にしていきたい旨をお願いし散会となった。
 なお、この会議は年に1回この時期に行われるもので、消防行政の今日的な話題をご提供いただき、また消防法に関する疑問にお答えいただく等、重要かつ貴重な場として機能している。会員の皆様においても、本会議にて取り上げて欲しい議題があれば、各ブロックの法制委員会委員にお声がけをいただければ幸いである。
中村 聡(なかむら・さとし)
東京都建築士事務所協会法制委員会委員、荒川支部、ナカムラ建築設計室
1968年 三重県生まれ/1994年 明治大学大学院博士前期課程工学研究科建築学専攻修了/1994 – 2002年 株式会社日総建/2003年 一級建築士事務所ナカムラ建築設計室設立